■もしも「カメラマン×モデル」だったら 2007/03/20
これで5日目。
毎日撮影に望んでも、和也にカメラを向けた瞬間に、仁はその手を下ろしてしまう。
そして、同じような言葉を吐いてものの数分でさっさと撮影所を後にするのだ。
当初の予定通り進まないスケジュールに、スポンサーが怒るのかと思えばそうでもなく。
元々、こうなることを考慮しての撮影スケジュールに思えてならないのが今の和也の心境だ。
でなければ、写真集の発売から3ヶ月も前に撮影が始まるのがおかしい。
しかもまだ、写真集の宣伝すらされていない。
『和也の写真集が出る』という噂だけが一人歩きしている現状で、いつこの企画が破棄されるのか気が気じゃないが、スポンサーの口振りから、どうやらそれも無いように思える。
彼が和也に言ったのは、ただ一言。
「赤西は妥協なんてする男じゃないから、君もプロならあいつに付いて行きなさい。」
とのこと。
叱咤激励...なのだろう、と思いつつ、プロ意識の強い和也は、今日もまた決められた撮影所へと出向いていた。
「お前も懲りないね。」
「.........」
「...?
笑えって言ってるの、聞こえない?
そんな無表情じゃどっちにしろシャッター切らないよ?」
「.........」
カメラを持って、毎日同じような言葉を和也に投げる仁。
ただ一言、笑え。と言って、毎回似たような表情を作る和也にシャッターを切らずにカメラを下ろすのだ。
だが、今日はいつもと違って、和也は笑顔を作らずにただ無表情で仁を見ていた。
傲慢な仁の態度に、和也の我慢も限界がきているのだろう。
一度俯き、瞳を閉じて。
顔を上げると同時に瞳を開いてきつく、仁の瞳を見据える。
その眼力は凄まじく、和也の感情が一気に爆発した。
「毎回毎回バカの一つ覚えみたいに笑え、笑えって...命令口調で上から見下ろした発言ばっかしやがって、てめぇ、何様のつもりだ!?
何の妥協だか知らねぇがな、俺はこれでもプロ意識持ってこの仕事してるんだ!!
今の俺に撮る価値なんて無いんなら、とっととこの仕事降りればいいじゃねぇか!!」
怒りを通り越して、なぜか悲しくなってきた和也の瞳が潤む。
零すものかと堪えながらも、結局涙一片、零れていった。
カシャ...
響くシャッター音。
驚きで、流れていた涙は止まっていた。
「っ!?」
「お前、そのまま俺への不満全部ぶちまけろ。」
「...は?」
「作り物の笑顔なんかよりも、いいカオしてる。」
「何言って...」
カシャ、カシャ、カシャ...
再度響くシャッター音。
仁の表情は、意地の悪い笑みを浮かべてはいるが、とても楽しそうで。
涙を流しながら怒った表情なんて、写真集に載せられるわけなんてないのに、どんどんシャッターは切られていく。
あれだけ「ムダ」だと言い続けていたのに、なぜこんなにもシャッターを切っていくのか。
疑問が膨れ上がり、いつの間にか和也の怒りは形を潜めていた。
「俺はお前達モデルのより美しいカオを撮るのが仕事なの。
ブッサイクな面とっても金になんかなんねぇの。
解る?」
「...ブッサイクで悪かったな。」
フィルター越しに向けられる視線は、とても真剣なもので。
どれだけ仁がプライドを持ってカメラマンとしての仕事をしているのかが窺い知れる。
それと同時に、仁の言う『妥協』も和也には解った気がした。
「だから、今のお前の表情は良いンだって。
感情がありのまま出てる。
作ったカオを評価され続けたお前には解らないかもしれないけど、人間ってな、感情がそのまま表情になったカオが一番キレイなんだよ。
例えソレが怒った表情だったとしてもな。」
「は...何だよ、ソレ。」
「だから。
今のお前のカオはイキイキしててキレイだ。って褒めてんの。」
「...なっ!!!
ちょっ...、まっ!!!
っ、撮るんじゃねぇ!!!」
「バカじゃねぇの?お前。
俺はカメラマンだ。っつってんだろ?
一番キレイなカオ撮らねぇで、何撮れって言うんだよ。」
シャッター音が途絶え、カメラから顔を上げた仁は、子供のような無邪気な笑みで和也にとっては爆弾に成り得る発言をかました。
不意を付かれた事で、言葉を理解するとともに、真っ赤に顔を染め上げる和也。
そんな照れた表情も、仁はすぐさまカメラに収めていく。
怒声を浴びせながらも、次第にどうでも良くなってきた和也は、知らずと笑いが零れてきて。
人間開き直りも肝心だ。とでも言うかのように、和也は仁と対峙した。
次々命令口調で出される要求に答える和也は、やはりプロそのもので。
「お前、最高。
一番キレイに撮ってやるよ。」
楽しそうな仁の声が、撮影所に響いた。
「亀梨、写真集の写真選んだから目通しとけよ。」
「...ん、.........っ!?
何でこんな写真入れてんの!?」
「は?どれ?」
「これだよ!!!
俺がお前に一番最初に撮られた泣きながら怒鳴り散らした時の写真!!!
こんなん入れんな!!!」
「ばっか!!
コレはコレで一番キレイなんだから入れるに決まってんだろ!!!」
□-◇あとがき◇-□
書いてみたくなった「カメラマン×モデル」
何かねぇ~、ダメ出しする赤西サンを書きたかったの。
んでね、ダメ出しされすぎて怒りながら涙流す亀梨サンも書きたくなったの(←当初の目的に非ず)
コンセプトは、感情を表に出さないけど仕事の時はきちんとカオを作る亀梨サンと妥協知らずな敏腕カメラマン赤西サン。って感じで。
けどね、亀梨サン、普段は無表情って裏設定があったにも関わらず、山Pが出てきてあんまり裏設定の意味をなさなくなっちゃったの。
...行き当たりばったりで小説書いてるからこういうことが起きるんだよね...ι