Black × White


12月24日。
世間では『クリスマス・イヴ』と騒がれる日。
本当はイエス・キリストの聖誕祭の前日なのだが、現代の人々にはそんなことどうでもいいようで、他人の誕生日前日なのに、自分達の好きなようにこのイベントを楽しんでいる。
本来の意味をあっさりと無視されるクリスマス。
24日のイヴは前夜祭というのに、都心部ではかなりの賑わいを見せている。
そしてこの日、世話しなく働く事を余儀無くされた者たちがいた。
それは、天使。
天使は24日の夜、地上に住まう人々に幸せを与えるという仕事がある。
何故、クリスマス定番のサンタクロースではなく、天使なのかと言うと、人に幸福を与えるという仕事は、やり方は違えど、双方とも目的が同じであり、所謂同業者という間柄だ。
そこで、天使とサンタの長は話し合いにより、天使は24日の夜に、サンタは25日の当日の夜に仕事をするという協定を結び、今日まで両間の衝突もなく過ごしてきた。
人々の間では知られていないが、天使もサンタも意外に組織的なのである。

そしてやはり、組織には付き物のサボる者もいるわけで。

「何で自分の誕生日にたかだか人間の為にプレゼントなんかしなきゃいけないのさ。」

天使にしては珍しい黒髪黒瞳を持っていて、それでいて純白の翼を携えている見目麗しい天使。
名を越前リョーマ。
だが、その容姿とは正反対の口の悪さで悪態をついている。

「君は天使だからね。
 地上の醜い人間に幸せや希望を与えるのが仕事。
 そして僕は悪魔。
 愚かな人間から幸せや希望を奪うことが仕事。」

地上の高層ビルが立ち並ぶ所に降り立った天使の元に、色素の薄い髪と瞳を持ち、天使とは正反対の漆黒の翼を携えて、こちらも見目麗しい悪魔が現れた。
悪魔の名は不二周助。
悪魔らしい残酷な笑みをしている。

「仕事なんてしてないくせに。」
「それは君も同じだろう?
 それに一言言っておくけど、僕は仕事する為に此処に来たんだ。」
「仕事?」

普通の天使なら、悪魔に出逢うと恐れ戦くものなのだが、この天使は違った。
今で言えば、「知り合いだから」という一言に尽きるのだが、知り合いと言うからには、やはり出逢いもあるわけで。
この天使は出逢った時も自分のペース崩さず、もちろん恐れたり震え上がったりなんてするわけでもなく、初対面の悪魔に向かって自分の持てるボキャブラリーを駆使して罵詈雑言を並び立てたのだ。
その口の悪い事、悪い事。
普通の天使が聞いたら即で卒倒しそうなくらい、天使に有るまじき言葉の数々だった。
そして、この天使らしくない天使を気に入ったとても悪魔という言葉が似合う悪魔は、それから頻繁に地上で会うようになったのだ。

「君を奪いに。」
「…それって、仕事?」

何時の間にか、嫌いじゃないという感情は、好意に変わっていて。
だけど、2人ともいい性格をしているので、その感情を言葉に出すこともなく、ただただ、態度や雰囲気で相手の感情を読み取ってきたのだ。

「立派な仕事でしょ?
 幸せや希望を与えるのが君の仕事。
 僕は奪うのが仕事。
 なら与える君を奪うのが手っ取り早いと思わないかい?」
「…俺の他にも天使なんて腐るほど沢山いるけど?」
「他の奴を奪って何が楽しいのさ?
 僕が君を奪えば君は誰かに与えるなんて仕事をしなくてよくなるんだよ?」

そして、そんな2人の恋愛はやっぱり駆け引き染みていて、軽口は留まる所を知らないようで、ぽんぽん本音を覆い隠す言葉が口をついて出て行く。
本音を隠す言葉でも、全く真逆のことを言っているわけではないところが、流石と言えようか。

「…俺が不二サンに奪われてもやっぱり与える仕事はするみたいだね。」
「どういうこと?」

一瞬意表を付かれた様に、言葉を返す不二に、リョーマは天使らしくない、どちらかといえば悪魔に属する方の笑みを向けた。

「“俺”を不二サンに与えるっていう仕事。」
「なるほどね。
 けど、嫌な仕事じゃないでしょ?」
「…自信家。
 自惚れと言ってもいい気がする言葉だね。」
「常に自分に自信を持ってなくちゃ悪魔なんてやってられないよ。」

2人して笑い合って、腕に抱き合って、それでも意地の悪い笑みは絶えず浮べていて。
階下に見える光は満天の夜空と競えそうなほどイルミネーションに彩られ、光り輝いていた。


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