朝のヒトトキ


チュン…チュン…

トントントン…コトコト…

日の光が降りしきる中、窓の外からはスズメの囀りが、部屋の外からは、リズムよく包丁を使う音が聞こえてきた。
まだ、夢の住人である少年が、心地よく耳に馴染む音により現実の淵に立たされていた。
いつもは寝汚い彼だったが、自分の部屋では当然有り得ない音が聞こえて来る違和感に眠け眼をゆっくりと開けた。
それが、この少年の長くも短い1日の始まりだった。



「うわぁ〜〜〜!!!」

少年が目を開けた先には、見知らぬ男性が1人眠っていた。
男性…といっても、見た目、年頃は少年と大差なく、青年、といってもいいほどだ。
そして、その青年は、栗色の髪の毛にふっくらと桜色に色付いた唇をしていて、少女と見間違うばかりの可愛らしい顔をしていた。
それでもどこか凛とした感を漂わせていて、少女ではなく、青年だという事を思わせていた。
そんな可愛らしくもあり、凛とした顔を起き抜けに、しかもアップで直視して、叫ばずにいられるだろうか。
いや、いられはしないだろう。
いくら、コーディネーターは整った顔立ちばかりだと言っても、ここまで整った顔立ちを見るのは珍しいことなのだ。
ドキドキと未だ早鐘を打ち続けている心臓を押さえながら、少年は今の現状を整理していた。
なんやかんやと身振り手振りでオロオロしていると、誰かが部屋に近づいてきて、少年に話し掛けた。

「起きたようだね。
 おはよう。昨日はよく眠れた?」

部屋の戸口に立つ男に綺麗に微笑まれて、少年は音がしそうなくらい勢いよく綺麗に顔を朱に染め上げた。
この男も先ほどの青年と同じぐらいの年頃で、濃い闇色の少し長い髪を後ろで1つに括っており、大人の女性へ送るような美しいという形容詞がぴったりな顔立ちをしていた。
どれくらいの間、見惚れていただろうか。
あまり長い時間ではなかったが、少年にしてみては、長いこと目を奪われていた。
その沈黙を破ったのは、以外にも寝ている青年だった。

「ん…。」

僅かに発せられた声に反応して、戸口に立っていた男が寝ている青年へと歩み寄ってきた。

「キラ、起きた?」

先ほど、少年へと向けたとき以上の柔らかな笑みを、キラと呼ばれた青年へと向け、未だ寝ているキラの身体を優しく抱き起こした。
その慈しむような動作で、粗方のことを察した少年は、所在無さ気に視線をあちこちへ泳がせていた。

「…あれだけ大きな声を間近で聞いて、何故まだ寝ていられるんだ?」

人肌を求めるように擦り寄ってくるキラの頬を男は呆れながらつついている。
それでも尚眠り続けるキラ。
まったく起きる気配はなかった。

「そういえば、昨日はありがとう。
 大いに助かったよ。」
「…え?…
 あ、あぁ。別にかまわないよ。」

未だ、仄かに赤みがさしている顔を横に振り、いきなり話し掛けられたことに同様を隠せないでいた。

「ん゛〜…」

流石に何度も頬をつつかれ、眠りの淵から呼び戻されたのか、眠っていたキラが、批判めいた声をあげ、ゆっくりと瞼を開けた。

「キラ…?起きたのか?
 おはよう。」
「ん…。
 アスラン…おはよう…?」

まだ完全に覚醒しきっていないのか、キラはボーっとアスランと呼ばれた男を見ていて、掛けられた言葉を鸚鵡返しのように返した。
キラはふと何かに気付いたように、周りをきょろきょろと見渡し始め、アスランの正面に座っている少年と目がばっちりと合ったが、キラの表情は未だ半分寝ぼけているようだった。

「…この子…誰?」
「昨夜この家まで案内してくれた地元の子だよ。
 夜遅かったから泊めたんだ。」
「…ここに?
 ほどんど雑魚寝状態じゃん。」

キラが言うのももっともで、今キラたちがいるのはリビングに当たる部屋で、引越しの荷物が所狭しと置いてあり、寝るスペースを強引に確保した感じだった。

「で?名前は?」
「…あれ?
 そういえば、名前まだ聞いてない…」
「…アスランって普段しっかりしてるけど、時々抜けてるよね…。」

キラの呆れた呟きに、アスランは反論していて、どんどん2人の会話が広がっていった。
そんなこんなで、3人は互いに自己紹介を済ませ、帰ろうとした『ヒサト』と名乗った少年を引きとめ、アスランの作った朝ごはんを3人で食べ始めた。
ヒサトは、昨夜、感じた予感が当たる事を確信したのだった。

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