出逢い
「なぁ、おい。聞いたか!?
都会からこの町に引っ越してくるやつがいるんだって!!」
「うっそだぁ。」
「あ、わかった!!
その人たちっておじいちゃんやおばあちゃんなんでしょ?」
「それが違って若い男2人なんだって。」
「はぁ!?
この町に!!何のためにだよ!?」
こんな会話をしたのがつい数時間前。
いま、俺の目の前には、有り得ないことがおきていた。
今の時間は夜の11時。
そして季節は春になったばかりで、夜はまだ肌寒い時期である。
俺の目の前には何の変哲もない1本の大きな桜の木。
これはいい。
問題は桜の木の根元だ。
そこには、どうみても人間にしか見えない人影が2つあり、まったく動かない。
『美しい桜の木の根元には死体が〜』のフレーズが頭の中を巡ったため、本気で死体かも、っと思ったが、どうやら違ったようだ。
大きな動きこそしないものの、規則正しい寝息が聞こえてきた。
安堵のため息を洩らすと同時に、俺はこの人たちを起こすことを決意した。
見た感じ、整った顔立ちは彼らをコーディネーターということを確信付けてくれたが、肌寒い外で寝るのは身体に悪い。
そう思い、俺は恐る恐る声をかけた。
「あの…こんなところで寝てると体調崩すよ…?」
控えめに目の前に寝ている2人に話し掛けてみたが、起きる気配はなかった。
「あの!!」
さっきより幾分か声を張り上げてみる。
すると、栗色の髪の女とも見れる可愛い顔立ちをした男を抱き締めるように眠っていた、濃い闇色の髪の綺麗な顔立ちをした男のまぶたが僅かに震え、ゆっくりと目を開けた。
その瞳は深い碧色で、俺は思わず目を奪われた。
互いに見詰め合ったまま沈黙が続いたが、周りの状況を理解したらしく、濃い闇色の髪の男は慌てたように抱き締めていた栗色の髪の男を起こし始めた。
「キラっ!!
起きろ、キラ!!!」
「ん…アス、ラン…?」
一度目を鬱陶しげに開けたのだが、またもや寝る体勢に入ってしまったのか、『アスラン』と呼ばれた男の首に自分の腕を回し、肩口に頭を乗せて嬉しそうに目を閉じてしまった。
どうやら、『キラ』と呼ばれた男は1度寝たら中々起きない性質のようだ。
そのことを知っているのか、『アスラン』はため息を一つ吐いて『キラ』を抱えて立ち上がった。
「あの…なんでこんなところで寝んの?」
「今日、ここへ引っ越してきたんだが…」
「あんた達が都会からこの町に引っ越してくる人だったの!?」
俺はあまりのことに、『アスラン』の言葉を遮ってしまった。
「あ、あぁ。
だが道に迷ってしまってな。」
「俺があんた達の引越し先まで送ってってやるよ。」
俺の言った言葉に対し、驚いているのか、『アスラン』は目を丸くして俺を見ていた。
そんな『アスラン』にかまわず、俺はどんどん歩いて行った。
これが俺と『アスラン』と『キラ』の最初の出会い。
俺は、これからの生活が楽しくなるという確信めいた予感を抱いていた。
