苦境の決断
「艦長、話がある。」
真剣な表情をしながら、導かれた人気のない通り。
本当ならどこか個室にでも入って話がしたかったのだが、色々と仕事があり、雑務に追われての状況下なので人気のない場所で妥協せざるをえなかった。
先日、想いを通じ合えた相手に、確認したいことがあったから…
いつになく真剣な相手の話に、今後、どんな未来を映すのか…
彼女はまだ、何も知らない…
「コーディネーターなんて、ただの化け物じゃない!!
化け物は化け物同士、殺し合えばいいのよ!!」
叫びにも似た声が、AAの一室に響き渡る。
その一室にいるのは、ナチュラルの民間人の少年たちが5人。
ヘリオポリス崩壊時からAAに乗り合わせた学生達だ。
5人とも軍服を纏っているのは、この戦争に思うところがあるから、なのだが、やはり人によって、思うことは180度も違うと言ったところか。
一番その思想の違いが顕著に現れているのはフレイだろう。
ザフトとの交戦の折、父親であるジョージ・アルスターが乗る先遣隊が討たれ、『人道的立場』から保護をしたラクスを人質ととり、強制的に停戦状態に持ち込んで数日、その間にフレイは軍に志願した。
父を失うという出来事から、彼女の心を占めるのは、コーディネーターに対する憎悪のみであり、それは、身近にいる、彼女をも守ってくれている筈のキラに対しても向けられた。
そして、その憎悪が爆発し、冒頭の叫びが音となり、丁度運悪く部屋へ足を踏み入れてしまったキラに直接ぶつけられ、部屋中を反響した。
「き、キラ!!」
「フレイも、まだ色々と混乱しているのよ!
だから、そんなに気にすることはないのよ!?」
「私は正気よ!!
パパを殺したコーディネーターなんて、絶対に許さないんだから…!!
闘って、闘って、闘い抜いて、それから死ぬといいわ!!!」
「フレイ!!」
空気が凍りついたその空間で、憎悪を直接ぶつけられたキラは、俯き、肩を小刻みに震わせている。
その姿を見たミリアリアは、キラが傷ついたのだと思い、必死に取り繕うようにフォローを入れるが、言葉の発信源であるフレイによって、全てが無駄に終わった。
そんな彼女の瞳は、髪の色同様、赤く燃え上がっていて、その瞳からは憎悪の色が強く、彩られている。
未だ、俯いたまま肩を小刻みに震わせていたキラから、微かな声が聞こえてくる。
それは次第に聞き取れるほどの音となり、顔をあげたキラの表情を見た瞬間、その場の時が凍りついた。
そう、キラは冷笑を湛えながらクスクスと、笑っているのだ。
その笑みは、全てを凍てつかせるような、絶対零度の笑みであり、いつも温和な彼からは想像できないほど、冷たい笑みだった。
「君が僕を利用しようとしていたのは、最初から気付いてたよ。
時が来るまで待っていたんだけど…もうその必要はないみたいだからね。
死にたくなければ此処を動かないことだ。」
にっこりと、感情のない笑みでフレイを黙殺させると、キラは一言残し、その部屋から出て行った。
扉が閉まったその瞬間、けたたましいアラームが艦全体に響き渡る。
何事かと、キラの言葉を頭の片隅に追いやり、ブリッジへと駆け出した。
フレイ1人をあのまま部屋に残しておくわけにもいかず、サイはフレイを連れてブリッジへと入っていった。
途中、フレイからの抵抗があったのか、かけている眼鏡が定位置に収まっていなかったり、手や顔に、少々の引っ掻き傷を携えていたりしている。
未だ、抵抗の言葉を喚き散らすフレイは、鬱陶しいことこの上ないが、其れさえも気にならないくらい、ブリッジクルー達は目の前の画面に釘付けになっていた。
外の広大な宇宙を映し出すはずの画面。
そこには、敵MSが3体、こちらに銃を向け静かに停止していた。
何時の間に、ここまで近づかれたのか。
敵の接近を告げるアラームも敵影を捕捉するレーダーも何の反応を見せることはなかった。
この3体のMSが目の前に現れるまで…
緊迫した、張り詰めた空気により、沈黙を押し通す空間に、通信が入ったことを告げるアラームが鳴り響く。
こちらが開く前に、強制的に通信回線を開かれた。
画面に、紅いパイロットスーツを着た少年が映し出される。
「こちらはX102・デュエル。
貴様たちに投降を申し入れる。返答を。」
淡々とした口調で、義務のように告げられる向こう側の要求。
考える時間もなければ、悩む理由もなかった。
未だAAは民間人を抱えたまま。
ならば、守るため、投降するしか止むを得ない。
そう判断を下したラミアスは投降信号をあげさせた。
先日の、ナタルが行った取引きめいた宣言により停止していたヴェサリウス。
そして、いつのまに合流したのかガモフまでもが、レーダーに捕捉される位置まで近づいていた。
なのに、何故アラームは鳴らなかったのか。
疑問は残るがその場に答えられる者は誰もいなかった。
□-◇あとがき◇-□
本編と違うところ。
その1 フレイは父を殺された後、すぐに入隊しました。
その2 まだハルバートン提督の部隊は到着してません。
その3 フレイは自分の感情を抑え、周りに気取られないような気配りをしてません。
その4 ラクス返還をしてません。
その5 ここまでの時間の流れは約1ヶ月かそこらのできごとです。
その6 もうすでにマリューさんとフラガさんはラブラブです。
これより先は本編を覆します。
だって黒アスキラですし。
そしてそして。
少々、話のつながりが妖しいのは、実はコレ、前に書いた『for the love of him』の原案だったりします。
やはりフレイには暴言の数々を吐いてもらわねば。
彼女のその無謀で浅はかな思い切りのよい性格は好きです。
だけど、アスランのキラを誘惑し、その言葉で人を傷つけるのだけはいくら改心しようと私は絶対に許しません。
…何がいいたいのかわけわかんなくなったので逃げます。
アスラン、出てこなかった…(>_<)