生存確認
「…っう」
「気付かれました?」

小さく呻き声を上げ、ゆっくりと瞼を上げる。
そうして辺りを見渡せば、自分がMSへと押し込んでしまった少年と目が合った。
撃たれたはずの右肩に圧迫を覚え、視線をそちらに投げて確認すると、傷の手当てが施されている。
彼の後方には彼と同年代の子供が3人、声に誘われて視線を向ければ、軍の重要機密でもあるMSに近づいて、あまつさえ、乗り込んでいる少年もいる。
それを目にした途端、考えるよりも先に身体が動いていた。

ドン、ドン…

彼らを威嚇するように発砲し、機体から離れさせる。
その行動に対し、彼らを庇うようにして自ら止めに入ったキラを制して、民間人の子供達を自分の前へと1列に並べさせた。
一人一人に名前を名乗らせ、自分も名乗った後、今後の処置について話した。
当然のことながら、理不尽な話に反論が返ってくる。
それを空に向かって発砲する事で黙らせて話を続ける。
ラミアス自身、自分が理不尽なことを言っていることは百も承知している。
だが事実、外の世界は戦争をしているのだから。
その為の重要機密であり、MSなのだ。

「威嚇とはいえ、そんなに発砲しちゃって、銃弾の無駄遣いしてもいいわけ?
 地球軍も甘いね。」

ラミアスの後方から楽しそうな、軽い感じの声が聞こえてきた。
今思い出したかのように、キラは声を上げ、ラミアスは驚きながら視線を後ろへと流す。

「!!あなたは、ザフトの!?」
「…ザフト軍クルーゼ隊、ラスティ・マッケンジー。
 先の交戦で負傷したのを何故かそいつらに拾われて手当てされてな。」

不思議そうな顔をしながらオレンジの髪の、紅いパイロットスーツを着込んだ少年は事の成り行きを簡潔に口にした。
ラスティと名乗る少年の怪我は、ラミアスよりも酷いらしく、頭や腕、足などに包帯が巻かれている。

「何故、俺を助けた?
 お前達にしてみれば、俺はザフトで敵だ。」
「俺達は中立国・ヘリオポリスの民間人だ。
 怪我をしていれば、ザフトだろうと地球軍だろうと助けるのは人として当たり前だろう?」

さも当然、と言わんばかりに応えを返すトールの言葉に、迷いはない。
例え、外が戦争をしていようが、俺達には関係ない。
そう、言外に言っているのが聞こえてくるほど、思い切りのいい返答だった。

「…俺を殺すか?
 地球軍のマリュー・ラミアス。」
「っ、任意に助けられた命を、奪う権利は私にはありません。
 ...私も、助けられた身なのだから。」

声は至って軽い感じなのに、瞳がそれを裏切り、幾許かの真剣味を孕んでいる。
その瞳を真正面から受け止め、ラミアスは返答の言葉を口にした。
軍人としては甘いかもしれない。
だが、人間としての、道徳、倫理を無視するよりはマシ。
話をそこで打ち止めにし、地球軍と連絡をとるため、ストライクにて通信を開始した。
電波妨害が邪魔をし、中々手応えはない。
根気よく続けていても何の変化もあるわけがなく、パワーパックをつけ、もう1度通信を試みようとしている時、ザフトの攻撃が再開した。

その攻防戦を繰り広げていると、無事だったAAが姿をあらわし、ザフトを撃退したのだった。



「ラミアス大尉!!」
「バジルール少尉。」
「ご無事で、何よりでありました。」
「あなた達こそ、よくAAを。
 おかげで助かったわ。」

駆けつけてくるナタルたちに労いの言葉をかけ、生存していることに対し、歓びを顕にした。
そこに、第7機動艦隊所属のムウ・ラ・フラガも加わり、事の顛末を話し、状況把握を行う。
ストライクから降りてきたキラに、驚きを隠せないでいる人たちを余所に、フラガはキラの方へと歩み寄った。
それに続くようにして、ラミアスやナタルも歩き出す。

「君、コーディネーターだろう。」

何ともなしに言われた言葉に、一瞬驚きを表したのはキラだけではなかった。
その場にいる、ナタル並びに地球軍は一抹の動揺を隠せずにどよめいている。
流石に些か今までのことで確信を抱いていたラミアスは、驚きはしなかったものの、その表情は幾分か強張った。
キラがフラガの言葉に肯定を示すと、銃火気類を持っていた軍人は挙ってキラに銃口向ける。
隣に立っていたトールは庇うようにしてキラの前に立ち、牽制するように銃口を向ける兵に意義を唱えた。
その言葉に、うろたえを見せる兵もいたが、銃を降ろす素振りは見せない。
流石、軍人といったところか。

「銃を降ろしなさい。
 その子供の言うとおりです。
 彼のおかげで危機を脱したのは事実です。」
「ねぇ、キラ…彼、どうしよう…?」

ラミアスの凛とした言葉により、向けられていた銃は渋々ながらも降ろされた。
それに安堵したミリアリアだったが、ふと、先ほど保護したラスティのことを思い出したのだろう。
彼はキラと同じコーディネーター。
そして、ザフト軍の正規の軍人である。
民間人のキラにでさえ、このような反応を示す地球軍に、ザフト軍に所属している彼が、どうして受け入れられようか。
そのことを不安に思い、だがここで見捨てる事もできるはずもなく。
そんなミリアリアの小さな声を聞いたのか、ラミアスは言い難そうにしながら言葉を紡いだ。

「もう1つ問題が…」
「問題、ですか?」
「…実は、先の工場区での交戦の折に、負傷した敵軍の少年をこの子たちが保護しました。」
「敵軍!?
 ザフトの兵士を、でありますか!!」

やはりというか。
さっきよりもざわめく兵士達に内心、冷静に「どうしようかしら」と思いながら言葉を口にする。

「私は、人道的立場から、この子たち同様、保護したいと考えています。」
「ザフト兵はこの学生達と違って正規の軍人です!
 そのようなこと、認められません!!」
「だけど、この子たちが彼を助けました。
 私もこの子たちに助けれられた身です。
 敵軍だからといって、救われた命を見捨てる事はできません。」

口論の末、ナタルが折れ、ラスティの保護が確定した。
保護、といっても怪我をしているからであり、怪我が完治した折には捕虜になることも確定している。
今は怪我の完治が最優先であるため、医務室にて拘束されることになり、運びいれる前に厳重にボディチェックをして、武器類を取り上げている真っ最中だ。

「おぉ、おぉ。
 出るわ、出るわ…よくこんなに武器を隠しておけるもんだ。」

フラガの感心も頷けるように、ラスティのパイロットスーツからは武器が多く隠されていた。
軍服ならいざ知らず、パイロットスーツにこんなにもどうやって隠しているのか。
そう思うほど、多くの武器が発見されていった。
隠すザフトがすごいのか。
それを手当たり次第に見つけ出すフラガがすごいのか。
答えが見つからない問いだった。







□-◇あとがき◇-□

なんか、丁度良く切れたのでここで第2話は打ち切ります。

こと戦闘関係に関しては、一々文章を綴っていくのが「めんどい」の一言に尽きるのでかなり大雑把に省いております。
まあ、この話は本編そのまんまなので(まだ、ですが)どういう状況かはわかっていただけると心から信じております(←自分勝手)

これ書くときに一番困ったのはラスティのファミリー・ネームです。
実は私、ラスティの名前どころか顔さえも知らなかったと言うアホです。
だってアニメでは顔の判別がつくほどアップに映らなくて、声は撃たれた時の呻き声だけ。
EDのキャストの部分に名前が載りませんでしたし、SEEDの公式サイトのキャラクターを見ても、ミゲルは載ってるのにラスティは載ってなかったんだもん!!!
てなわけで、織山のお気に入りサイトさんを参考にさせていただきました。
確かいくつかのサイトさんにラスティが出てきてフルネームを名乗ってるのがあったよなぁ。というかなり曖昧な記憶のおかげでこの小説を書くことができました。
ありがとうございました~♪

んでわ、言い逃げしますっ!!!