隠された事実
あの忌まわしい事件から、数日がたった今でも、あの悪夢はいつまでも付き纏ってくる。
酷い対人恐怖症になってしまったキラは、大人を見ると、ひどく怯えてしまうようになってしまった。
アスランと一緒に居なければ、アスランの母親にさえも怯えてしまう。
それは、アスランにも言えたことで。
キラほど酷くはなかったが、軽い対人恐怖症に陥っていた。
互いに、互いの存在がなくなれば生きていけなくなるほど。
それほどまでに、絶対的な存在だと。
そう、2人は認識してしまった。
何をするにも、どこへ行くにも2人一緒。
それをヒトは、『依存』という......――――――――――――





「あなたたちに、真実を話すときが...来たのかもしれません。

 これから話すことは、全て真実です。
 本当なら、一生話すことはないと、決めていたの。
 けど、今回の事、原因がこの真実にあるとしたら、あなたたちは知っておかねばなりません。
 たとえ、これから先、あなたたちの運命が変わろうとも...」

静かに、眼を伏せていたレノアが顔を上げた時。
そこには、先ほどまでの『母親』の顔はどこにもなかった。
アスランと同じ、翡翠の瞳に。
決意と強さを秘め、真剣な面持ちで話し始めた。

「事の起こりは5年前。
 あなたたちが生まれる少し前のことよ...

 当時、ある研究がコーディネーターとナチュラルの研究者によって、行われていたわ。
 その研究者の、ナチュラルの研究者、ヒビキ博士。
 キラ君。
 あなたの、本当の父親よ...―――――――――――――」








コポコポと、培養液の織り成す音が響く。
ここには、たくさんの試験管が存在していた。
そして、多くの有能な研究者達も......

「返してよ!!!!
 私の赤ちゃん、返してぇ!!!」

キラと同じ、茶色の長い髪を持つ女性が厳格な男に泣き縋っている。
それを、男は苦い顔をして受け止めていた。
その男、ヒビキ博士は泣き縋っている女性の夫である。
そして、キラの実の両親である...

「あなたは、どうしてこんなことを!!!!
 命は、ものじゃないわ!!!生まれいづるものよ!!!」
「最高のコーディネーターとして生まれることが、この子の幸せだ!!!」

人工子宮により、体細胞分裂を繰り返し、発生していく胎児を指してヒビキ博士はのたまう。
数度に渡る遺伝子操作の結果、発生を止めてしまう試験体の中で、彼らの子供だけが、唯一正常に発生を続けていた。
所謂、完成体だ。
そして、もう一つ。
試験管に胎児が入れられている。
完成体の胎児の、双子の姉だ。
こちらは完全な失敗作だった...
二卵性の双子だったため、彼女の存在に気付くのが遅れ、コーディネートできる段階を越えてしまい、試験体としての役割も充分果たせなかった失敗作。
それでも、諦めず遺伝子操作は行われたが、造り出された失敗作は、ナチュラルだった。
完成体の名前は、キラ。
キラの姉に当たる、失敗作の名前は、カガリ。
無事に生まれてきてくれた我が子に、彼らの母親がそう名付けた。
完成体だろうが、失敗作であろうが、彼女にとってはどうでもいいことだった。
1度は失いかけたその命。
こうして、抱き締める事ができ、彼女は喜びに満ちていた...

一世代目の『最高のコーディネーター』は、完成した。
そうなれば、次に望むのは、二世代目の『最高のコーディネーター』を作り出すこと...
そして白羽の矢が立ったのが、当時、身篭っていた一世代目のコーディネーターの女性。
二世代目の誕生ということで、普通よりも多く、病院へと赴き、遺伝子操作を受けている。
科学者達はそれに関与し、今度は母体を通して生まれる『最高のコーディネーター』を作ろうとしているのだ。
だが、なかなか望む結果は出なかった。
胎盤を通すので、母体にも負担がかかり、死産や流産する胎児が後を断たない。
一世代目の時同様、発生を途中で止めてしまう受精卵も出てくる始末。
人工子宮の実験に切り替えようかとした時、2人の胎児が生まれてきた。
その胎児こそ、アスランとラクスだ。
アスランの方がラクスより数ヶ月先に生まれ、2人で対となる遺伝子を持たされ、生まれた。

ようやく完成した『最高のコーディネーター』。
望む結果が得られ、科学者達は大いに喜んだが、嘆く科学者達もいた。
研究の第一人者、ヒビキ博士だ。
順調に育っていく胎児の遺伝子を調べていた時、不覚にも、見落としてしまっていたのだ。
生れ落ちた時に、健康診断と称して観察したところ、重大な過ちに気付くこととなった。
それは、失敗作として、コーディネートされずに生まれてきたカガリにも齎されてしまった。
狂気の夢が齎した、最大の危険因子。
SEEDという、危険因子を...
まだ発見したのが発生の途中だったらよかった。
だが、もう胎児は生まれている。
手のつけようがなかった...







「そのことが、ブルーコスモスの一部に知られてしまった...」







「蒼き清浄なる世界のために...!!!」
「蒼き清浄なる世界のために!!!」

荒らされる研究施設。
逃げ惑う研究者たち。
襲い掛かるブルーコスモス...

「あなた!!」
「逃げろ、逃げるんだ!!!!
 あの子達を、奴らに渡してはならない!!!
 なんとしてでも、逃げ延びるのだ!!!
 そして、彼らに、被害が及ぶ前に!!!!」

一機のシャトルに、一抹の希望をもって妻を押し込むヒビキ博士。
ヒビキ博士の表情は、彼女も久しぶりに見る『夫』の表情だった...



宇宙へと投げ出され、上手く操縦できないながらも、彼女は必死にプラントへと向かった。
ザラ夫妻と、クライン夫妻に、全て話すために...
ヒビキ博士の仕事の関係上、病院にて、互いに面識はある。
何度か顔をあわせた程度だが、きっと覚えているだろう。
不安を拭えずに、砂時計型のプラントのどこへ行けば会えるのか、全く解らなかったが、とにかく港口へとシャトルを飛ばす。
突然入航してきたシャトルに警備の者が警戒するも、落ちるようにシャトルから這い出した彼女を見て、音を口にするものは誰も居なかった。
銃で撃たれたと、傍目で見て取れる肩の傷。
彼女に異常性を感じた者達により、素早く対処され、ザラとクラインの名前を出すと、すぐさま連絡をとってくれた。

程なくして、ザラ夫妻とクライン夫妻が訪れた。

「いったいどうしたのだね!?」
「ブルーコスモスに...襲われました......」
「何故!?
 私達コーディネーターならまだしも、あなたたちは同じナチュラルでしょう!?」
「皆さんに、話さなければならないことが、あります...」

彼女は顔面蒼白になりながらも、しっかりと言葉を紡ぐ。
全てを話さなければ、被害は拡大するばかり。
それを防ぐ事が、せめてもの償いだと。
そう判断した上で、彼女は夫から託された役目を果たすために。

そして、事の顛末を知らされた4人は愕然とした。
自分達の子供が、死ぬかもしれない実験の実験体とされていたこと。
そのために、危険因子をもって生まれてきてしまったこと。
恨みたくとも、誰を恨んでいいのかわからないこの現状。
研究の第一人者であるヒビキ博士はもう、この世にいないのだ。
今目の前にいる彼女もまた、被害者だ。

「......あなた、自分の子供は、どうしたの?」

話を聞く限りでは、彼女の子供もブルーコスモスによって危険に曝されたわけだが、逃げ延びた彼女だけがこの場にいる。
不審に思わないほうが変だろう。

「私と一緒にいると、あの子達が危険に曝されます...
 幸いにも、あの子達の顔はあちらに知られていませんでした。
 だから、あの子達の出生のデータを書き換え、知人に託しました...
 例え、それが私のエゴだとしても、死ぬ謂れなきあの子達には生きていてほしかった...」

流石に2人を一緒の家に預けることは憚られた。
だから、月に住むヤマト夫妻にキラを。
地球の中立国、オーブのウズミ家にカガリは預けられることになった。

涙を流すわけでもなく。
取り乱すわけでもなく。
耐えるように、手を白くなるまで握り締め。
吐き出すように言葉を口にする。
彼女に、『母親』としての顔は、どこにもなかった...






□-◇あとがき◇-□

ホントはもうちっと簡潔に短く切りたかったです(泣)
てか、過去の回想にまた過去の回想って、どうよ?私。
英語で言うところの大過去ですな(客観的)
アホな織山は置いておくとして、勝手に織山が取り決めた、連載の1話は5ページまで!!を守るべく書いていたら、かなり詰め込む事になっちゃいました...
だって、過去に過去の回想を突っ込むって無茶な事して、続いちゃったらわけわかんなくなると思ったんだもん!!!
しかも最後意味わかんないし、こっからどう繋げようか悩むし...
まぁ、なるようにしかならないから良いんですけどぉ(←良いのかよ!?)

そいや、私キラの本当の母親の名前、知らないのですよ。
なので、固有名詞がありません!!!
『彼女』とかそういう名詞で補ってますが、如何せん、拙いです...

そして、そして。
例に洩れず、カガリの扱い酷いです。
出さないように気をつけていたのですが、原作に沿っている以上、双子の話を省くわけにはいかず、後々出てきちゃいます。
よもやカガリスキーさんはいないと思いますが、これから先、出てきちゃったら扱いはフレイ並になります。