切り捨てた言葉
「で?
 何でムウが此処にいるの?」

AAのクルー達が収容されている部屋の扉を開け、キラが開口一番に口をついた言葉。
何故か非難の眼を向けられているというのに、普通に彼ら接しているフラガへとかけられた言葉。
ものすごく、呆れたといった体でキラは言葉を紡いだ。

「仕事サボって何やってるんですか?」
「失礼な奴らだな。これも仕事のうちだ。
 顔も知らないコーディネーターが世話係するよりも、顔馴染みの俺が世話した方がいいだろ?」

睨み付けるようにして、ニコルが咎めた口調で尋ねてみれば、フラガは然も当然といった感じに切り返す。
その言葉に、ため息をついてしまったのは仕方のないことだろう。

「俺のことはいいとして、お前達は何で此処にきたんだ?」
「キラのオトモダチとの約束を果たしに。」
「……え?」

非難の眼も、キラたちが向ける呆れた視線も飄々と受け流し、フラガは聞き返した。
まだ、AAのクルー達に尋問をする時間ではないし、何よりも、ナチュラル嫌いのイザークがこの場にいるのだ。
不思議に思わないことはないだろう。
現に、フラガの言葉を聞いた瞬間、忌々しげに顔を歪めたイザークを見れば、本当に用件があるのはキラやアスランだということがわかる。
多分、有無を言わさず無理矢理連れてこられたか、付いて来ざるを得なかったのだろう。
いたずらな笑みを含んだ表情でアスランが口にした言葉に一番反応したのはミリアリアだった。

「キラと、話がしたかったんだろう?」
「え…あ、はい!」

いきなりの事で、一瞬呆けた表情をしたものの、即座に立ち直る。
多分、コレがキラときちんと話せる最後のチャンスだと思うから。
ミリアリア、トール、サイ、カズイは覚悟を決めた。

「なぁ、キラ…
 俺達、友達だよなぁ?」
「…友達…?
 あぁ、確かにそうだったね。
 けど、君達は軍に志願して地球軍の軍人になった。
 そして、その時点からザフトの正規の軍人である僕の敵になったんだよ。」
「なっ…!!
 キラ、お前!?」
「僕はザフトの軍人だよ?
 何を勘違いしているの知らないけど、例え友達だろうが敵には変わりない。
 憎むべき、ブルーコスモスの意思を持つ地球軍は僕の敵だ。

 君達は、コーディネーターに偏見はなかったみたいだけど、
 無意識な言葉ほど、残酷なものはないんだよ…サイ・アーガイル。
 でも、久しぶりに“学生”やったけど、それなりには楽しめたよ。
 アリガトウ。」

淡々と、冷酷な笑みで、残酷な言葉を紡ぐキラ。
その言葉を聞き、4人は次第に顔を強張らせていく。
信じたくはない言葉。
だが、キラの態度から、信じざるを得ない言葉。
混乱する頭と、歪められていく表情と。
何もかも、アスランが想像していたものと同じで。
一層笑みを強くして、笑む。

「何でだ…!?
 何で、お前はザフトに居るんだよ!!キラ!!!」

キラの笑みを受け、爆発したかのようにサイが捲くし立てる。
どうしても、納得できないといった風に声を荒立てキラに思いの全てをぶつけた。

「……一番大切な人を守るため以外に、どんな理由があるというの?
 君達が『キラ・ヤマト』のためを思って軍に志願したように、僕も大切な人のために軍に居るんだよ。」
「一番…大切な、ヒト…?」
「トールとミリアリアにはあの日に話したよね。
 『その人を失ったら、食べる事も、寝ることも、生きることも…全てを止めてしまう。
  そのくらい、愛してる人。』って。」
「へぇ。
 俺ってそんなに愛されてるんだ。」
「愚問だね、アスラン。」

ミリアリアの呟きとも取れる言葉に、笑みを一層深くして、キラは答えた。
それを茶化すようにアスランが合いの手を入れるが、それすらも、楽しそうに、無邪気な子供のような表情でキラは返す。

「アスランを守るためなら、誰が敵にまわろうとも構わない。
 例えそれが、君たちだろうと、同じザフト軍の者であろうと。」

イザークたちにも警告を発している言葉を口にしたキラの表情は、どこまでも冷え切っていて、どこまでも残酷で。

「それでも…キラがそう思っていても、私はキラのこと、友達だと今でも思ってるから…!!!
 だから…今まで、ありがとう……」

一瞬戸惑いを見せながらも、ミリアリアは的確に、言葉を選びながら自分の想いを告げる。
どう思われていようとも、一緒に過ごした半年間は本当の思い出なのだから。
ウソだったとしても、楽しかった思い出には違いないのだから。

「そう。」
「お前達はこれからガモフへと移ってもらう。」
「え!?」
「どうして!?」
「お前達のIDはオーブのモノで、正式に軍人登録はされていない。
 したがって、民間人としてオーブへ降りてもらう。」

アスランの思わぬ発言により、静かだったその場がざわめきだつ。
そんなことお構いなしにアスランは続けた。
元より、アスランは『キラのオトモダチ』を民間人としてこの艦から降ろす事に決めていたのだ。

「甘いな。
 お前達も。」
「民間人を巻き込んでまで、戦争をしたいとは思わないので。」

用は済んだとばかりに出て行こうとするアスラン達にフラガが話し掛けた。
それにあっさりと答えを返すアスランは冷笑を浮かべている。
誰ともなしに向けられた言葉だと気付く者は、この中に何人ほど居るのだろうか。
少なくとも、キラやミゲル、ラスティ、フラガ、そして、AAの艦長と副長のマリュー、ナタルは気付いたようだったが。

「あのヒトたちは、キラさんの友達だったのでしょう?
 なのに、あんな言葉…」
「……あいつは…あいつらは、ブルーコスモスを憎んでるからな。」

後のことはフラガに任せ、アスランたち4人はすぐさま部屋を後にした。
部屋の扉が閉まった事を確認したニコルは呟くように言葉が口をつく。
その言葉に反応し、苦々しげに、吐き出すようにして、フラガが返事を返した。
『人の想いと言う物は、もっと根深いところにあるもの』
アスランが格納庫でマリューに対し、言った言葉。
確かにそうなのかもしれない。と、そう思うニコルたちだった。



あの後、イザーク達も早々に部屋を退室し、また、アスランとキラの部屋へと訪れた。
テーブルにティーセットを置き、備え付けの椅子に座り、優雅にお茶を楽しんでいるアスランたちが目に入る。
イザーク達がきたことに気付き、アスランはティーセットをキッチンへと片付けに行き、キラはベッドへと場所を移す。
部屋の中へ、3人を入れるためだ。
それがわかり、颯爽とキラの前へと足を進める。

「君達が此処に来た、ってことは、ミゲルとラスティが信用した。と考えていいわけだね?
 何処まで話したの?」
「キラとアスランの話を省いて大まかに執行部隊の結成の理由、後は俺たちの出生の秘密だけです。」
「ふぅ~ん。
 それで、ラスティたちに忠告されても此処にいるわけか。

 はっきり言うけど、僕はアスラン以外何もいらないんだ。
 だから君達が首を突っ込んで死のうがどうなろうが構わないし気にも留めないだろうね。
 それでも、君達は僕達のことに首を突っ込むの?」

含み笑いをした表情で、軍人の顔をしたキラが3人を見据える。
その紫電の瞳の強さに、圧迫感や威圧感を覚えるも、イザーク達は引こうとはしなかった。
圧力をかける、その綺麗なまでの紫の瞳に、冷たく、残酷な色を滲ませながら、キラは3人に再度忠告をする。
引く事のない3人の態度に、アスランとキラ、果たしてどちらが先に笑みを浮べるだろう…







□-◇あとがき◇-□

ご、ごめんなさい…m(_ _)m
まずは謝っておきますι

実のところ、ミリアリアたちとの会話はもっと後になるはず、だったのですが、アスランたちの過去話を書いてるときに、前振り(?)がないと、ヤバイ!!!ということに気付き、急遽、この場所に突っ込みましたι
なので、些か話の繋がりが変かも…しれません。
だって、だって…!!!!
ここで暴露しますが、8話をUPした時には既に12話まで出来上がっており、この話ができたときにはもう16話までできてたりしますι

キラの「例えそれが、君たちだろうと~」の部分、実は、「ミゲルやラスティ、ラクスだとしても、僕は戸惑いなく討つ」っていう言葉を入れたかったのですが、織山の計画性の無さが原因で入れられなくて…

不完全燃焼です…(泣)