権力者の企み
「とまぁ、そういうわけで、ラクス様の口添えの結果執行部隊が結成されたわけ。」
「アスランとキラはそのときラクス様と初対面だったんだけど、両方とも以前から互いのこと知ってたみたいなんだ。
 まぁ、そこら辺は当事者に聞いてくれ。
 俺らはアスランたちから聞いただけだから。」

ざっと、アスランとキラがラクスと出逢い、執行部隊の結成までの話をし終えた。
話の内容に、イザーク達は言葉もなくただただ呆然と聞いているしかなく、混乱する思考を押さえ込み、どうにかラスティの話を飲み下す。
いち早く立ち直ったのは、アスランを尊敬するニコルだった。
尊敬の念を抱いているからこそ、アスランたちが5歳で行った数々の所業を、サラっと飲み下せたのだろう。
その根底には、「流石アスランですね。」という思いでねじ伏せたモノもしばしば。

「気になったのですが、『ある事件』ってなんですか?」
「それは話すと長いから却下。
 というか、それはアスランとキラに関わることだから俺達の口からは言えない。」

次に立ち直ったのはイザークだった。
もう完全に目が据わりきっていたのが、今ではもう、すっかり落ち着きを取り戻している。
いや、取り戻そうとしている、と言った方が適切だろう。
逡巡しながらも徐に口を開いた。

「…お前達が執行部隊に入隊したのはいつだ?」
「それなら答えてやるよ。
 まず、執行部隊が結成されたのがさっきの話の1年後、つまり、10年前。
 俺達が入隊したのはそれから4年後…今から6年前になるかな。
 ………話、聞きたい?」

ディアッカもすっかり立ち直り、無言で肯定の意を示す3人を見た後、ラスティは隣にいるミゲルを見た。
視線を受けたミゲルは首肯をし、苦笑に似た笑みを向ける。
この話は深く、自分達の出生、秘密、上の権力を振りかざす者たちの思惑が渦巻くもの。

「俺達が、アスランとキラに出逢ったのは、7年前の、ある研究所でだった。」







「アスラン、キラ。任務だ。
 お前達にはディオネに行ってもらう。」
「ディオネ…?」
「土星の衛星だ。
 以前、偏狭の場所にあることから、ナチュラルの上層部が不穏動きを見せていた。
 もう無人だそうだが、その場所は当時のままに放置されているらしい。
 潜入調査と破壊が今回の任務だ。」
「はっ!」

漆黒の色に近い紺色をした裾の長い軍服を着込み、通信画面越しに伝えられる任務の内容。
“破壊”という言葉に引っかかりを感じながらも、敬礼をする。
何かがある、と半ば訝しく思いながらも確信を持つ。
元々、潜入調査なんてものは諜報部隊が得意とするところだし、破壊活動だってそうだ。
自分たちでも充分こなせる任務だが、裏返せば、他の部隊でもできる任務。
それをわざわざザフトの裏で活動する執行部隊に任務を任せる。
何かがある、と公言しているようなものだ。
そして、その何かとは、かなりの確率で自分達と関わりがあるもの。

作戦開始は今から4時間後。
移動時間を考えながらも余る時間で調べをまとめる。
それにより、導き出された答え。

愛用するパソコンのディスプレイを見ながら心底楽しそうな、残酷な笑みを浮かべる。




「アスラン様、キラ様、到着いたしました。」
「ありがとう。」
「お気をつけてくださいませ。」
「うん。
 わかってるよ。」

作戦開始20分前。
アスランとキラは民間船でディオネに赴いていた。
そして、今いるところはディオネの港口。
実際、使われていない研究所として登録されているので、港口付近に警備はいない。
だが、放棄されてもそのままの状態で残っているとなると、危険はないとは言えない。
それを確かめた後、宇宙服に身を包んだアスランとキラは静かに下船していく。
目指すわ研究所の中枢。

ほどなくして見つかった研究所は、人の気配は全くせず、機械だけがただただ連動していた。
機械と、試験管、機械と繋がっている水溶液が満杯に入った2m近くあるガラス張りの筒。
様々なものが所狭しと置いてあり、何本ものコードが床中に張り巡っていて、床が水浸しになっている。
次の部屋へ続く扉があり、開けてみると人が倒れていた。
いや、元々は“人”だった肉の塊だ。
ずぶ濡れになり、全裸状態で転がる肉の塊。
男も女も、入り乱れて床に伏している。
まだ、成長しきっていない赤ちゃんや生後1年くらいの子供。
人型を保っていればまだいい。
中には解剖されたのか、脳みそや内臓が飛び出していたり、腕や足が千切れていたり。
無残にもただの肉の塊としか見えないようなものまである。
これを見ただけでも、ここで何が行われていたのか、事情を知らない人でもわかってしまうだろう。
そう、ここで、『人体実験』が行われていたのだ。
違うところで、似たような実験が行われていたと知らずに…

地球軍上層部のナチュラルによる、進化したコーディネーターを作る計画。
元々コーディネーターはナチュラルが作り出したもの。
なら、それを改良し、自分達の意のままに操れる人間兵器を作ればいい。
その発案に伴い、作り出されたコーディネーターは軍に寄付されるという契約を結び、 地球軍が極秘に行ってきた所業。
コーディネーターはモノではない。
ちゃんとした生き物であり、人間だ。
だが、戦争が起ころうとしている動乱の世の中、多くの武器を持たんがために狂い始めたナチュラルにより、この計画は実行された。
その結果がこれだ。
母体を通して生まれ落とすのは危険とし、試験管で育たせるも上手く育たない。
焦れた科学者達は、死んでいった子供達を解剖し、原因を追求することに務め、欠点を克服していこうとした。
だが、繁殖活動でないやり方で、人を生み出すという、人の理を捻じ曲げる行為に進展はない。
そう思い始めたころに、2体の人型を保ち、尚且つ能動的に成長をする試験体ができた。
試験管の中で成長させ、3年が経った頃、試験管から外へと出し、軟禁状態でその後の経過を観察する。
作り出された体が拒絶反応を起こすこともなく、順調に成長していった。

ある日、その作り出した子供に畏怖を感じる者達が出てきた。
成長速度は普通の子供と変わりない。
身体的能力も、コーディネーターの一歩先を行くくらいあり、それは、この計画の目的だったのだから喜ぶべきところ。
だが、一番恐れたのはその能力だった。
唯一救いだったのが、その子供たちが不完全だったことだ。
最初に遺伝子に組み込まれた能力の1部。
人間兵器となり得る要素は現れる事がなかった。
強すぎる力を持つがために、自分達では制御できない。
そう判断した上層部は早々にこの計画を中断し、研究所を捨てた。
それが、約1月前。


「まだ…何かがいる…」
「あぁ、僅かだが、2つ…気配があるな。」

敏感に気配を察し周囲を見渡す。
ここにあるのは肉の塊だけ。
そして、扉が一つ。
アスランたちが入ってきた扉とは違う、もう1つの扉がその部屋には存在していた。

扉をくぐり、歩き出す事数分。
ひとつの、真っ白くて広い空間へと出た。
そこに、同じくらい白い服を着た子供が2人、その空間に横たわっていた。
子供といってもアスランたちと年齢的に大差はなく、横たわっていてもただ単に眼を瞑っているだけのようだった。

「君達が、俺達を、殺すの?」
「何人もの大人たちが、僕達を殺そうとしたみたいに。」
「…君達なら、俺達を殺せる…」
「何で、そう、思うの?」

「「君達に、同じモノを、感じるから。」」

ゆっくりと身体を起こし、言葉を紡ぎ始めたその子供たちは、何の感情もない表情で淡々と口を開く。
ただ、白だけの空間かと思えば、あちこちに、もう黒ずんでしまった赤が散らばっていた。
それに気付かなかったのは、この子供たちの存在があったからだろう。
自分達と似てなくて、同じモノ。
その存在感が先立ち、部屋の隅に転がっている、肉の塊に気付くのが遅れた。

薄っすらとした儚い笑みを浮かべる子供たちに、満面の笑みを返し、アスランは手を差し伸べた。

「もう、ここにいる理由はないんだろう?
 俺達と一緒に来ないか?」

それが、子供たちにとって、ここで見た、初めての光だった。

それから1年間、軍の教育を受け、執行部隊に入隊。
パトリック・ザラが身元引受人となり、その子供たちに名前を与えた。
ミゲル・アイマン、ラスティ・マッケンジーと…







「とまぁ、そういうわけで、今俺達は此処にいて、入隊を果たしたってわけ。」

「…よくもまぁ、そんなヘヴィな話を笑ってできるな…」

終止笑顔で、語り尽くしたラスティに、内心混乱しながらも突っ込みを入れるディアッカ。
急展開の話に辛うじてついていったディアッカだったが、そんな現実離れした話をどうにかこうにか納得しようとしていた。
固まったまま、動かなくなったニコルとイザークより、頭の中身が柔らかいのか。
ミゲルは一線引いたところから傍観しつつ、観察していた。

「あの…あなた達は本当に、発生の過程を全て試験管の中で過ごしたのですよね?
 そこまで完全に成長できるものなのですか…?」
「と言われてもなぁ。
 事実、ちゃんと普通の人間と変わらず成長してるからね。
 けど、俺達はあくまでも不完全体だ。
 完全に成長しているかと聞かれても答えられない。」

「…あいつらも…」
「そこから先は言うな、イザーク。
 ここから先の話は俺達の話とは違う。」
「これ以上は好奇心だけで聞ける話じゃないからね。
 自分の命を含め、全てを捨てる覚悟がないと聞けないよ。」

イザークが口を開きかけた瞬間、ミゲルがイザークを制した。
その声色は真剣なもので、ミゲルの言葉を継いで、ラスティも真剣な表情で言葉を繋げる。

「なら、何故俺達に、お前達の話をした?」
「アスランたちの話は俺達の話より、もっと暗く、因縁深い話になるから…
 だから、よく考えて欲しいんだ。
 関われば、全てを捨てることになるかもしれないから。」
「もし、聞きたいのなら…2時間。
 2時間じっくり考えて聞くか否か、答えを出せ。
 2時間後、もし聞く気があるのならこの場所に来い。」

厳しく、真剣な口調で音を成し、ミゲルとラスティは部屋を出て行った。
残されたイザークたちはただただ、混乱するばかり…







□-◇あとがき◇-□

イヤに長くなりました。
そして、プチ過去登場。
かなりこじつけたので、話がいまいち理解できないかも…
てか、書いてる本人が頭パンクしそうです。

次はちゃんとアスランとキラがでてきますよ!!(現在の)
今回の子供のアスランとキラは任務中だったため絡みがなく、結構辛かったです(>_<)