作戦開始
「これより、作戦を開始する。
首尾よく事を進め、気取られないように注意しろ。」
感情の窺えない表情で作戦開始の合図が送られる。
事を全て軽快に進ませて、再び出会うために…
秘密裏に行われる作戦だから。
作戦が進むにつれ、連絡をとることは可能だろうが、向こう側の味方と連絡が取れない今、不手際が生じれば修正する暇はない。
全ては、己と、向こう側の味方にかかっている。
想いを反芻し、愛しい人の気配を探るようにして、瞳を閉じ、小さく深呼吸をする。
――――――さぁ、作戦開始だ!!
「キラ。
こんな所に居たのかよ。
カトー教授がお前のこと、探してたぜ。」
「またぁ?」
「見かけたらすぐにひぱって来いって。
なぁに?また何か手伝わされてるの?」
「ったく。
昨日渡されたのだって、まだ終わってないのに。」
工業カレッジの開けた広場で資料に目を通しながらパソコンに打ち込んでいく。
眼にも止まらぬ速さでキーを叩くキラを止めたのは、キラの友人、トールとミリアリアだ。
他愛のない会話をしたのち、閉じられようとしていたディスプレイにニュースが入ってきた。
ザフトから、カオシュンへの攻撃の報道。
中立国にいるため、戦争に全く危機感を持っていないトールの声を聞き、遠く離れた場所に居る、彼の事に思いを馳せる。
早く、会いたい…
思いを募らせるたび、どうしようもない虚無感に襲われる。
トールの声で、埒のあかない考えを打ち捨て、言われたとおり、カトー教授のもとへと向かう。
途中出会った、フレイ・アルスターがサイ・アーガイルから手紙を貰ったと言う話をきっかけに、キラの、好きな人談義へと勃発した。
「告白されても全部断ってるけど、キラは、好きな人とかいないの?」
「いるよ。」
「どんな人!?」
「その人を失ったら、食べる事も、寝ることも、生きることも…全てを止めてしまう。
そのくらい、愛してる人。」
あっさりと簡潔に返ってきた言葉に、驚きながらもミリアリアはすかさず聞く。
興味津々といった風なトールとミリアリアに苦笑しながらも、彼に思いを馳せて言葉を紡いでいく。
静かに、ゆっくりと。
言葉を選ぶようにして音にする。
聞こえてくる、自分の言葉を耳にして、彼への思いを再認識して。
少し、儚げに笑うキラには気付かずに、トールとミリアリアは鳩が豆鉄砲を食らったような、そんな表情をしている。
クスクスと笑うキラに、からかわれたと思ったのか、2人は苦笑いをしながら互いの顔を見合わせている。
中に入ると、サイが待ち構えていたように1枚のデータの入ったMOを持って近づいてきた。
「追加だってさ。
コレ、何なんだ?」
「興味ないよ。
…とにかく、プログラムの解析さ。」
チッ...チッ...チッ...チッ............ドォン!!!!
けたたましい音と共に、地面を揺るがす大きな揺れが襲う。
只ならぬ気配を察したサイは扉を開け、逃げ惑う人を捕まえ事情を聞く。
「ザフトの攻撃だ!!
コロニーにMSが入り込んでるんだ!!!
君達も早く!!!」
告げられたことに不安を覚え、ミリアリアが小さく声をあげた。
我先にと非常口へ行こうとする大人の波に押され、キラは非常口から遠ざけられていった。
「キラ!?」
「ゴメン、先に行ってて!!」
次の瞬間、再度爆発が起こり、非常口の扉を塞がられてしまう。
行く道を断たれ、小さく舌打をした後、工場区へ向けて走り出した。
そこで、逃げ遅れたのか、キラとあまり年齢が変わらない少女を見つけ、有無を言わさず近くのシェルターへと無理矢理押し込んだ。
ドン、ドン、ドン...
無数の銃声と人の倒れる音、呻き声が響き渡る工場区。
そこに、地球連合軍初の新型MSが2体存在していた。
銃弾が飛び交う中、ザフトと地球軍の攻防戦が繰り広げられている。
「来い!」
「左ブロックのシェルターに行きます!
お構いなく!」
「あそこはもうドアしかない!
こっちへ!」
女ながらも果敢に火気類を駆使し、応戦している作業服を着ている女性が眼下に見える。
相手も此方に気付いたのか、応戦の合間に声をかけて来た。
その言葉に、行く手を阻まれたことを知り、何十mもある高さから下へ飛び降りる。
それを見た女性の表情が些か強張ったのを見たが、気にせずに女性の元へと駆けだした。
ドン、ドン、ドン...
「…っぐ…!」
「ラスティ!」
バイザーのガラスが砕け散り、ラスティの呻き声と倒れる音を聞き、そちらに目を向けたアスランは、血を流し倒れているラスティを目にした途端、目の前が真っ赤になった。
昂ぶった感情のまま、銃を使い、敵を打ち倒していく。
「ぅあぁ…!」
アスランの放った銃弾により、肩を打ちぬかれ、負傷した女性は力なく重力に従い崩れていく。
すぐさま駆けつけたキラは銃を捨て、ナイフを片手に迫ってくるザフト兵の顔をバイザー越しに見てしまい、呟きともとれる音を発した。
それは、相手のザフト兵にも言えることだった。
「アスラン…」
「ぁっ、キラ…」
時が凍りついたように互いの顔を見たままでいると、どうにか体制を保った女性により発砲された音で動きを取り戻した。
発砲され、アスランが後ろへと飛びのいたのを確認すると、どうにか力を振り絞り、女性はキラを2体あるうちの1体のMSに押し込んだ。
アスランはキラがMSに乗り込むのを確認した後、自分も残り1体のMSに乗り込んだ。
その瞬間、大きな爆発が起こり、辺りに爆風と砂塵が巻き起こる。
その後、ザフトのジンに襲われるも、戦いの最中に書き換えたOSにより、ジンを退却させることに成功した。
□-◇あとがき◇-□
まずは第一話。
と言っても全部そのまんまなのですが。
人間の記憶って、好きなところ以外にはとてつもなく脆いのですねぇ。
第40話ほどではないにしろ、第1話の再会の場面も好きなのですが、マリューさんのセリフ、かなりうろ覚えでした。
何度かビデオ見直しちゃいましたよ。
さてさて、この小説は本編よりなのですが、一部脚色があります。
カガリのこととか、カガリのこととか、カガリの…(以下省略。)
織山としては鬱陶しい事この上ないので出さずにいたかったのですが、そうなると、キラの「左ブロックの~」のセリフが意味を成さなくなりますゆえ、急遽登場。
なのでカガリと認識しずらい表現で約2行ほど登場させました。
でもやっぱり話の展開は本編と全くと言っていいほど同じです。