01.雪どけの音色
毛糸の帽子。
カシミアのマフラー。
ミトンの手袋。
学ランの内側に灰色のセーターを着込んで、完璧な防寒対策。
けれども、露出している頬や耳、鼻の頭は赤くなっていて。
どんなに着込んでいても、寒いものは寒いのだと、思い知らされる。
「はぁ...」
吐いた息は、どこまでも白く。
一瞬にして掻き消えた。
今は、2月。
受験シーズン真っ只中。
「おい、越前。 何してんだよ。」
「...別に。」
ふと、空を見上げていたリョーマに、近くにいた堀尾が話しかけた。
「別に。」と言う割に、心此処に在らずといった状態のリョーマ。
何がなんだか解らない堀尾は頭に疑問符を浮かべるばかり。
理由を知っている桃城は苦笑を浮かべているが、敢えて口に出すことはしない。
言ったところで、二人の関係を知らない堀尾にはとうてい理解できないからだ。
これはもう、ほっとくに限る。と桃城はストレッチに集中することにした。
堀尾の追求はまだまだ終わりそうにない。
コートを走るボールがラケットに当たり小気味良い音が響く。
部員同士の掛け声も強く発せられ、集中力がどんどん増していた。
今、コートは2年生が使用している。
レギュラーであるリョーマでも、ずっとコート内で練習が出来るわけではなく、そういう時、リョーマはコート周りを走っていた。 ふと、誰かが近づく足音に、リョーマは走る足を徐々にスローダウンさせていく。
完全に停まり、体ごと相手に振り向いた。
「おめでとうございます、先輩。」
「ありがとう、越前。」
あまり見せない、年相応の笑みがリョーマから零れた。
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02.月を追いかけて
Coming soon...
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03.花咲く日々に
Coming soon...
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