many happy returns
「俺、シャボン玉、嫌い。」
「どうして?」
「すぐ壊れるじゃないっスか。
 何より身体に触れて割られるのが一番気持ち悪くてイヤっスよ。」
「僕は…けっこう好きだけどね。」
「どうして?」

僕が彼に投げかけた疑問と同じような口ぶりで彼が聞き返してきた。
シャボン玉の液をつけたストローを吹いて、シャボン玉を作りながら、僕は彼の問いに答えようと口を開いた。

「だって、シャボン玉って…――――――――――――――――」





唐突に、目の冴えた意識に、教師の下手な英語が耳をついた。
数度瞬きをした後、机に突っ伏していた上体をあげて、黒板の右上に掛けられている時計を視界に入れた。
時計の針が指す時刻は、午後の授業が始まって20分は過ぎていて、約20分近く寝入ってしまったことを自覚すると同時に先ほどまで見ていた夢に自嘲の笑みが込み上げてきた。

何で今更、あんな夢を…
もう、彼は…自分のそばにいないのに…

そう思いながら窓の外の青空を見上げた。
今は夏休み間近の7月下旬。
冴え渡る空はどこまでも青く、雲は点々と青空に在るだけだった。
そんな中、キラキラとしたものが上から降ってきた。
“降る”というよりは、ふわふわと“漂ってきている”と言った方がいいかもしれない。
現に今、目の前まで漂ってきたものは風に煽られてまた上へと上っていったから。
それをシャボン玉だと認識するまでに、そんなに時間はかからなかった。
少しシャボン玉を眺めていたが、不意に1つの考えが頭を過ぎっていき、居ても立ってもいられなくなって教室を飛び出すように駆け出した。
後ろで授業をしていた教師が何か叫んでいたが、構わず走り抜ける。
目指すは、屋上。

「どうして、先輩はシャボン玉好きなんスか?」
「だって、シャボン玉って天まで届けって思わせるように空高く上っていくでしょう?
 だから、シャボン玉に込めた君への僕の気持ちが空に届いたら、この同じ空の下にいる君にも届くかなって思って。」

彼に伝えたこの言葉を、今度はあの時のように彼が僕に伝えようとしている。
そう思うから。
だから僕は、彼の言葉に応えるために走るんだ。
彼のもとへ。



再び2人が巡り会うまで、あともう少し…







□-◇あとがき◇-□

前サイトの遺物です。
思いっくそ1周年記念に間に合わないと踏んで発掘してきました。
んでもってちょいっと手を加えてみて。
私今コレ読んでて思ったのですが、中盤の視点、一瞬リョーマかと錯覚しました(苦笑)
だって不二先輩が居眠りって...どうですか?
有りですか?
私の中ではそういう認識が無かったようで自分で書いたハズなのに思いっきり間違えました(苦笑)
リョーマがアメリカへ戻ってしまったという前提があるようです、この話(苦笑)

でわでわ。
次はハガレンでお会いしましょう。