さよなら、世界
「俺は、明日が欲しい!!」




Cの世界で実の両親であるシャルルとマリアンヌを葬った1ヵ月後、ルルーシュは第99代ブリタニア皇帝に就任した。
スザクはルルーシュによりナイト・オブ・ゼロの称号を与えられ、ルルーシュの専任騎士となった。
このことは全世界を震撼させ、その日、ブリタニアの歴史が始まって以来初めての少年王が誕生した。





ブリタニア王宮のある一室で今後の国の方針を話し合う会議が開かれていた。
A4サイズの用紙に、事細かにこれからブリタニアという国が行っていく政策がレポートのようにして綴られている。
製作したのは皇帝であるルルーシュ本人で、スザクは綺麗にまとめられた束を宰相や国務に携わるさまざまな役職に就く人たちに1部ずつ配っていった。
パラパラと初見で流し読みをする男たちの表情が段々と険しくなっていく。

「まず、貴族制度を廃止する。
 それと、殖民エリアを全て開放しろ。
 復興はそのエリアを祖国とする名誉ブリタニア人と数人のブリタニア兵を使えばいいだろう。」
「なりません、皇帝陛下!!
 領土を縮小させるようなこと!!
 そのようなことをなさいましたら、直ぐに敵国に攻め落とされてしまいます!!」
「そうですぞ!!
 貴族制度を廃止など、絶対にあってはならないことです!!」
「黙れ。
 今は私が皇帝だ。
 ならば、私が法律だ。
 そうだろう?」
「Yes,your majesty.」

すばやく両目のコンタクトを外したルルーシュは、紅く輝くその瞳で周囲を見渡し、言葉を紡ぐ。
絶対尊守の言葉を。





「これで、狸親父共の実の無い話を聞かずに済んだな。」
「お疲れ、ルルーシュ。」
「成り上がりの皇帝は人望が無くて困る。」
「誰も彼もが君を皇帝と認めていないんだから、しょうがない事だよ。」
「お前もか?スザク。」

紅い瞳を惜しげもなく晒し、口角を上げてうっそりと笑うルルーシュはどこか甘い毒を孕んでいて。
スザクはその毒を甘受し、恍惚な表情で椅子に腰掛け足を組むルルーシュの前に跪き、肘掛に置かれたルルーシュの左手を取り唇を寄せ薬指を口に含み舐め上げた。
翡翠の瞳が獰猛に光を放つ。
全身で、ルルーシュを求めるかのように。
口に含んで舐めた指を軽く食み、次の瞬間には噛み付いて紅い雫を垂れ流させた。
うっとりと笑んだままのルルーシュはスザクの好きなようにさせている。
指に付着した血液を舐めとられ、漸く開放されたルルーシュの薬指には食い破られた傷はおろか、歯形さえもが綺麗に消えていた。





「お兄様、スザクさん。
 私は、お二人の、敵です。」

モニターに映る、盲目の少女。
スザクの放ったフレイヤ弾頭で死亡されたと思っていた、エリア11だった日本の総督だった少女。
ルルーシュの、実の妹。

あぁ、生きていた。

ルルーシュの心を占めるのは、死んだと思っていた守りたい人の無事な姿。
その両隣に討つべき相手が居ることも、関係が無かった。
ただ、生きていたことを心から喜ぶには、彼女の放った言葉がルルーシュに棘となって突き刺さってできなかった。

超合衆国に加盟したいと表明しておきながら、その議長や各国の要人を脅す真似をしてみせたルルーシュは世界中から敵として認識されるようになった。
そして、それを利用し、シュナイゼルは各国から支持を得てブリタニアに対抗する勢力を着々と増やしていく。
独裁者となってブリタニアに皇帝として君臨するルルーシュに、シュナイゼルから宣戦布告をされたのは、3日後の事だった。



「スザク。」
「何?」

ルルーシュの右手とスザクの左手が重なり合い、絡み合う。

「スザク。」
「うん。」

額同士をくっ付けて身体を隙間も無いほど近づける。

「スザク...」
「ルルーシュ。」

俯いたルルーシュの瞳から、一滴雫が零れ落ちた。
重なり合う手のひらと身体。
次第に互いの唇も触れては離れてを繰り返す。
濡れた音を響かせて、ルルーシュはスザクの身体から離れた。
強い意志をその紅い瞳に秘め、願いを紡ぐ。

「生きろ、スザク。
 絶対に、死ぬな。」

ルルーシュの唇がスザクの首筋に降りる。
軽くキスした後、ルルーシュは首筋に歯を立て肉を食い破った。
溢れ出る鮮血をねっとりと舐めとる。
傷は、塞がっていた。
残るは、ルルーシュの歯形のみ。

「Yes,your majesty.」

無邪気な笑みを向けて力強くルルーシュの身体を抱きしめて。
絶対の誓いの言葉を、口にした。


二人そろえば、できない事なんて何も無い。






ルルーシュ率いるブリタニア軍とシュナイゼル率いる反乱軍は、歴史に残る凄まじい戦争を繰り広げた。
反乱軍には、黒の騎士団を始め、軍事力を持つ国の兵士らが参戦をしている。
数では反乱軍が優勢だったが、戦局はブリタニア軍が遥かに優位に立っていた。
戦略に関しては両者とも互角だが、戦術に関して、ルルーシュの方が上回った結果だ。
そのルルーシュもロイドが製作したナイトメアに乗り戦場へと赴いている。
その名も、エーヴル。
ラクシャータが以前ゼロのために作ったナイトメア、蜃気楼を基にして作られたロイド作のナイトメアはセシルの手も多大に加えられて360度全てにシールドを張れるようになっていた。

機体性能や搭乗者の技術が反乱軍を追い詰めた時、シュナイゼルの乗る天空要塞ダモクレスから戦局を一瞬にして塗り替える一筋の光が放たれた。
爆発は周囲のモノ全てを呑み込み無に帰していく。
敵も味方も全てを消し去るそれは、『戦争』とはあまり呼べない、虐殺のような戦いだった。
続く二投目も、地表に大きなクレーターを残して全てを無に帰した。

「ニーナ。
 フレイをこの戦闘空域に飛散させろ。」
『解りました。』

アヴァロンにルルーシュから伝令が入る。
既に準備の終えているニーナはルルーシュの命令を受け、手にしているスイッチを強く握りしめた。

「私が作ったフレイヤ。
 あなたは、この世にあってはいけないものなのよ。
 私の手で、壊してあげる。」

カチリ、とスイッチが押された。
アヴァロンから、眼には見えない何かが射出されるも、周りには全く感知されない。
三投目のフレイアは、爆発しなかった。
次々に投下されるフレイアも同じで。
ニーナの作ったフレイは、完全にフレイアの機能を停止させることに成功したのだった。



「このままでは...」
「ここまでだ、シュナイゼル。」
「ほぅ。
 君自ら、私の前に現れるとは。」

セイフティーを外す音が響く。
互いに向け合った銃口は、しっかりと相手の急所を狙っている。

「さようなら、ルルーシュ。」

乾いた音が響き渡る。
二人とも同時に崩れ落ち、床に倒れ伏す前にスザクがルルーシュの身体を抱きとめた。
スザクの後方には息絶えたコーネリアやカノンが転がっている。
ナナリーはすでに、咲世子によりアヴァロンに移された後であった。

「お疲れ、ルルーシュ。
 全てが終わるまで、眠っていていいよ。」

ルルーシュの身体を抱き上げ、靴を鳴らしてランスロット・アルビオンへと歩んでいく。
スザクの表情は満ち足りたものだった。
カツン、カツンと、スザク以外の足音がどこからともなく聞こえてきた。
ダモクレスの搭乗員はスザクが全て抹殺している。
では誰が?
疑問は既に解消された。
目の前に立つのは、紅月カレン。

「見つけたわよ、スザク。」
「何の用かな?カレン。
 ルルーシュは今寝てるんだ。
 あまり騒がしくしないでくれよ。」
「っ、ルルー、シュ...!!
 『寝てる』ですって?
 だって、もう、ルルーシュは...!!!」
「ここ数か月、ずっと忙しかったからね。
 全てが終わるまで、寝てていいよ。ってさっき言ってあげたんだ。」
「スザクっ!!!」

金属の擦れる音を響かせて、カレンは銃を構えた。
狙う先は、スザク。
カレンから見て、スザクの腕の中のルルーシュは既に息絶えていた。
眉間に銃弾を受け、空いた穴からはとぷとぷと鮮血が溢れている。
彼らが通ってきた道には、点々と紅い血痕が残されていた。

「あなたは、私が殺すわ!!」
「君には無理だよ、カレン。」
「いいえ。
 黒の騎士団、紅月カレンの名にかけても、あなたとルルーシュを殺す!!」

発砲音が響く。
弾はスザクの右腕を貫いた。
続いて放たれた銃弾は、スザクにかわされ壁や床にめり込んでいく。
飛び退いて、スザクはランスロットまで全速力で駆けた。
コックピットに乗り込み、ルルーシュを自分の膝の上に乗せてなんとか固定を試みる。
スザクはランスロットを操り操縦者を失って落下の一途を辿ってるダモクレスから飛び出した。
対するカレンも紅蓮聖天八極式へ乗り込み、空へと躍り出る。
二機の戦闘はそう長くは続かなかった。
利き腕を撃たれている上に、不安定なルルーシュの身体を乗せているスザクは、早々にランスロットに被弾を受ける。
輻射波動を数発くらい、足や腕がもがれていき、とうとう海上へと落下していった。
海の中で爆発が起こり、海上に大きな飛沫を上げた。







両軍の指導者を失った戦争は、神楽耶やナナリーにより停戦、終結へと向かっていった。
最年少皇帝ルルーシュは、皇族殺しの皇帝として歴史にその名を深く刻み込んだ。
ユーフェミアの名など、彼の前には擦れていく程、人々に、そして歴史に、彼の生きた証が塗り込められた。

ルルーシュとスザクが残した世界は、黒の騎士団や皇神楽耶と天子、ナナリーの手により一から彼女たちが望む優しい世界へと創りかえられていった。











海を一望できる小高い丘の上の小さな一軒家。
一人の少年が、寝台に横たわる少年を優しく見守っていた。
頬を撫でる手つきはとても優しく、慈愛に満ちている。
柔らかな翡翠の瞳に、強い紫水晶の瞳が映しこまれた。



「おかえり、ルルーシュ。」

「ただいま、スザク。」






さぁ

ここで、俺たちの新しい未来を作ろう

俺たちだけの、世界を創ろう







□-◇あとがき◇-□

blogに載せたものを加筆修正してみました。
私の思い描いた最終回は、若干本編の最終回と似てましたね(苦笑)
自己犠牲の果てに、世界的にスザクもルルーシュも死んでいる。って点が。
ルルーシュはホントに死んでしまったのか、コードを受け継いで生き返ったのかは知りませんけどね。
本編最終回を見て、コードを受け継いで生き返った話を書きたくなりました。
なので、今年中には書き上げたいな。と思ってます。
私は嘘吐き子なので、あえて『今年中』にしときます(笑)