二つの悲しみ
「…エド…」
「…ロイ…」
雨の降る中、2人の男が違う場所で空を見上げた…
相手への想いを込めて…
見上げた空は黒くよどんでいて、青空をぶ厚い雨雲がおおっていた。
まるで、自分の心のようだと自嘲気味に笑う男と、その男を見守る親しい人々。
何か、声をかけようかと思案する人々が目に入るが、この場にいるのは自分の意思。
心に決めたことを捻じ曲げるような人でないことを人々は知っている。
だから、かえってこの男から目をはなすことが出来なかった。
この場は、戦場————————————————
5日前、世界中にいる国家錬金術師がセントラルへ召集をかけられた。
この中にはもちろん焔の錬金術師であるロイ・マスタング、鋼の錬金術師であるエドワード・エルリックの姿もあった。
互いにいつも連れている者たちはいなく、ただ、召集をかけられた意味を考えていた。
頭の回転の速い2人だからこそ、自分の導き出した考えが当たって欲しくないと願っていた。
だが、無情にも2人の考えは現実となってしまった。
召集をかけられた意味、それは戦争…
前のイシュバールの時の内乱と同様、反乱する者を力で押さえつけようとする政府の考えが引き起こした戦争…
それに人間兵器である国家錬金術師が駆り出されるのだ。
もちろん、国家錬金術師でも色々なタイプがいる。
エドワードやロイのように、戦闘に長けている者や、マルコーなど、医療系に長けている者など様々だ。
だが、政府はそんなことおかまいなしに投入する。
国家錬金術師といっても所詮は人。
自分が死にたくないが為に敵を殺める。
政府からの命令は絶対である国家錬金術師は命令を拒む事は出来ない。
死にたくなければ敵を倒せ、ということだ。
逃げ出すものもいれば、政府の思惑通り動く者もいる。
だが、目的のある2人は命令に従うしかない…
だからこそ、2人はこの現状を忌々しく思った。
権力を振りかざすだけの上のやり方に…
相手の行く手を阻みたい。
けど、自分も戦場へ赴く限り、相手を止めることはできない…
相手のことを1番に考える2人だからこそ、相手のやることを邪魔したくない。
敵を殺めるためでなく、人々を救うために…
ただ、ひたすらに。
この戦場の地で、あなたの無事を祈ります…
