the moment to decide


いつまでも、不変であることなんて、望んではいけなかったのに…




賢者の石を探して、元の姿に戻りたいという、国家錬金術師になる時夢だったことが、つい先日現実となった。
実現したという事は、つまりエドワードは右腕と左足を、アルフォンスは身体全身を取り戻したというわけで。
アルフォンスの身体の成長はあの時のまま止まっていたけど、それでも生身の肉体は返ってきた。
そしてふと、漠然と思ってしまった。
肉体を取り戻してしまった今、これまで通り、軍にいられない——————と。
今まで全身が鎧だったアルフォンスは良い。
例え、鎧の方が大きすぎて、とても身長が足りなくても、いくらでもごまかしの言葉はある。
だが、問題はエドワードだ。
右腕と左足を失った代わりに、鋼の機械鎧をつけていた。
だからこそ、国家錬金術師になったとき、与えられた銘は『鋼』。
その2つ名の象徴と言うべき鋼の機械鎧がなくなり、本来のエドワード自身の右腕、左足が戻ってきた事は喜ばしい事だが、元来無くした腕や足が再びくっついているという事実は到底有り得ない事柄であり、人体練成を非としている軍としては、最大の禁忌なのは周知の事実だ。
そのことを解っていて、何故軍に残れようか。
否、残れるはずがない。
最年少で国家錬金術師になったほどの聡いエドワードの思考回路は、これからの身の振り方を即座に弾き出した。




「鋼の。」
「何だ、大佐。
 こんな所で油売ってていいのかよ。まだ仕事中だろ?」

また中尉にどやされても知らねぇぜ?

いつものように、普段のように、茶化して背後に来ていたロイを苦笑と共に振り返ってみれば、そこには、真剣な表情でエドワードを真っ直ぐ見つめくるロイがいた。
痛いほどに辛辣な視線を向けられ、エドワードは苦笑を浮べる他なかった。

「なぁ、大佐。
 何で、俺は今『子供』なんだろうな。」
「鋼の。」
「俺の腕や足、アルの身体を取り戻してから、ずっと考えてたんだ。

俺はもう、あんたの傍にはいられない。

自分が無力な子供だと思い知ったのは、これで2度目だ。」

泣きそうなほど痛い表情でエドワードは言葉を音に成した。
1度目は、母を練成して、アルフォンスの身体がもっていかれた時。
唯一の身内となってしまった弟を失う怖さが、それを自覚させた。
そして、2度目は今。
口に出しては絶対に言えないが、最初で最後の恋の相手、ロイの傍から離れなければならない今。

静かに、エドワードが吐き出す言葉を聞いているロイへと歩み寄って頬に優しくキスをした。
大人と子供故の体格差から生じる、足りない身長分をギリギリまで背伸びをして。
身体を離す時、掴んでいた手を離しながら、ロイに笑顔を向けて。
頬を伝う涙に、エドワードは気付いていたけど、変わらず笑顔で、ロイに背を向けて歩き出した。

「鋼の。
 いつか必ず、私はお前を迎えに行く。」
「俺はあんたたちの前から姿を消すんだ。
 何処にいるかなんて、連絡しないぜ。」
「なら探すまでだ。
 お前たちが賢者の石を追い求めたように、私は君を追い求める。」

歩き去っていくエドワードにロイは叫ぶ。
それに対し、取り戻した右腕を空高く上げた返事を返した。



“いつか”とか、“また”とか。
とても曖昧な時間の単位を大人は使う。
そして、大人はいつしかその言葉を言った事を忘れ去り、約束を無効にする。
それが子供の認識だ。

だけど、ロイは違った。
子供であったエドワードは、大人になってしまったけれど。
とても曖昧な時間は、とても長い時間に変わってしまったけど。

2人は再会を果たした。
けれど、これはまた、別の話——————。




この世は、不変じゃないからこそ、人の想いが強いのかもしれない…

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