046:開けるな危険。
魅上照の一日は、照にとっての神、ライトとユエの抱き着いてくる腕から抜けることから始まる。
いつも、照を真ん中にして両サイドをライトとユエで固めるようにして眠る習慣のためだ。
「ライト様、ユエ様、おはようございます。」
まだ眠りの波をたゆたっている二人に声をかけると、ライトとユエの、照に抱き着いている腕の力が幾分か弱まる。
今でこそ、二人を起こさずにスムーズに抜け出ることが出来るようになったが、最初の頃はこうはいかなかった。
神に触れるという行為からしておこがましいと思っている照である。
抱き着かれているという状況で、内心おたおたと焦るばかりで身動き一つ取れなかった。
それに比べ、格段に進歩した照はベッドから出ると先ず顔を洗うため、洗面所に向かう。
軽く身嗜みを整えた後、郵便受けに新聞を取りに行った。
郵便受けを開けると、いくつかの出版社の新聞が収まっている。
この家では、出版社によって、同じ記事でも見解が違ってくるという理由から、数種類の新聞を頼んでいるのだ。
取り出して来た新聞を手に、照はリビングへと入っていく。
入って左側の奥の方に対面式のキッチンがあり、その直ぐ手前にダイニングテーブルが置かれている。
左手の方にはローテーブルとソファー、テレビが置かれており、かなり広々とした間取りとなっている。
手にした新聞を纏めてローテーブルの上に置き、キッチンに置いてあるコーヒーメーカーのスイッチをいれた。
毎朝欠かさずコーヒーを飲む習慣のあるライトとユエのためである。
次にトースターをセットし、シンプルなエプロンを着用して簡易だけれど、しっかりと栄養バランスの考えられた朝食を作っていく。
5分とせずに、独特なコーヒーの匂いや、ト-ストの焼けた香ばしい匂いが漂ってきた。
そろそろかな。と、頃合いを見計らい、照は着ていたエプロンを脱ぎ、いつも自分が座る席の背もたれへとかけた後、リビングを後にする。
向かう先は、未だ夢の中を旅しているライトとユエが眠る寝室。
寝室の扉をそっと開けると、二人は抱き合ったまま穏やかな寝息をたてている。
起こすことが忍びなく思えてくる程良く眠りに就いていて、思わず再び扉を閉めてしまいたくなる自分を照は叱咤し、中へ足を踏み入れて行った。
「ライト様、ユエ様、そろそろ起きて下さい。
朝食の準備も整っております。」
「ん・・・、ぅ~...」
「はふ・・・」
もぞもぞと掛け布団が動き、それぞれが顔を出した。
寝付き、寝起き共に良い二人は、起こせば直ぐに眠りから醒めてくれるのだが、やはりどこと無くまだ眠そうだ。
寝起きの表情は、幾分か年齢よりも幼く見えるのだが、直ぐにいつもの凛々しい顔付きに戻ってしまう。
照はその瞬間が好きだった。
唯一、二人の無防備な表情を見せてくれる相手が、片割れの他に自分だけだと言うことを知っているからだ。
と、いうよりも、直接双方からそう聞いたからだ。
二人と朝の挨拶を済ませた後、ライトとユエは洗面所へ、照はキッチンへと向かった。
いつになく、機嫌の良い照は、冷蔵庫の中から林檎を2つ取り出し、それを見たライトとユエは、クスリと、訳知り顔で凄絶な笑みを漏らすのだった。
これが、この家で良く見掛ける朝の風景。
□-◇あとがき◇-□
書かないとか言いつつ、思わずしっかり走り書きしたデスノ『照×W月』小話。
うん。
小説っていうより小話だよね、コレ。
照主体だし、ライトとユエ寝ぼけ声しか喋ってないし。
これだけでもかなり楽しかったデス。
なぜタイトルが『開けるな危険。』かといえば、「藪蛇」って感覚でお願いします。
それか「人の恋路を邪魔するヤツは馬にけられて死んじまえ」かな?
まぁ、そんな感覚で。