encounter
「さっきからお前、何してンだ?」

大型の本屋の駐車場の片隅に置いてある自販機の前。
小さなレジ袋を提げた男が、あっち行ったりこっち行ったりと不審な動きを見せている。
その様子をついつい5分程観察してしまっていた新一は、確信に近い憶測を立て、普段ならば放っておくのに、その男に声をかけた。

「え?俺?」

突然声をかけられた事に驚いたのか。
びくりと身体を震わせた後、男はキョロキョロと辺りを見回して新一に向き直った。
見たところ、どうやら新一と変わらない年の頃のようだ。
藍よりも深い色の大きな瞳が、心なしか揺れているように見える。

「あぁ、お前だ。
 探し物か?それとも...金が足りねぇのか?」
「あ~...まぁ、その...ね?」
「ね。じゃ分かンねぇだろうが。
 俺はお前のダチじゃねぇンだし。」
「喉が渇いたから、ジュース買おうと思ったンだけど、10円足りなくて。
 どっか落ちてねぇかな。なんて。」

その男は、新一が問えば歯切れ悪くも返答した。
若干目が泳いでいるのは、うろうろしていた所を見られたからだろう。
ふにゃりとした、少々照れたような笑顔を浮かべ、誤魔化そうとしている。

「ふーん。...ソレは?」
「ん?あぁ、コレ?
 コレは捨てネコのメシ。」
「...は?」
「は。って何だよ。
 何か文句でもあんの?」

ソレ。と、男が提げているレジ袋を新一が指差せば、さも当然と言わんばかりにあっさりと口にされた返ってきた答え。
そのあまりにも予想外な発言に、思わず間の抜けた声が出てしまい、その結果、男は眉間に皺を寄せてしまった。
そんな男をマジマジと観察しながら、コロコロとよく表情が変わる男だな。と、睨まれているにも関わらず呑気な事を考えている新一。
端から見れば、男二人で睨み合っているようにしか見えないこの構図で、ふと、新一は表情を和らげた。

「イヤ...ネコのメシ買って自分の分買い損ねるなんて、とんだお人好しなんだなぁ。って。」
「バカだと思ってンだったらストレートに言えばいいだろ。」
「ちょっとはバカだと思ったけど、俺そーゆーお人好し、嫌いじゃないぜ?」

鋭い視線を向けられながらも、少々意地の悪い笑みを浮かべ、男との距離を縮める。
近付く距離に、少しだけ戸惑いの雰囲気を醸し出した男を挑発の笑みで以て一瞥し、自販機のコイン投入口にお金を滑り込ませた。

「...何してんの?」
「選べ。
 お前の動物愛護の精神が気に入ったから奢ってやるよ。」

本気で困惑しだした男に、有無を言わさぬ口調で言葉を返す。
新一は、訳が解らないといった表情を浮かべる男を急かし、ジュースを選ばせた。
取り出し口に重い音を立てて降りてきたジュースを手渡し、余ったお金で自分用に無糖のコーヒーを選んでボタンを押す。
また重い音を立て、コーヒーが降りてきた。
釣銭用のバーを降ろして、高い音を響かせながらお釣りが降りてくるのを待つ。
その間に缶のプルタブを押し上げ、男に向き直った。

「お前、名前は?」
「快斗。黒羽快斗。」
「俺は工藤新一。
 もう会わねぇかもしンねぇけど、お前の名前、覚えといてやるよ。」
「そりゃどーも。」

缶を持ったまま新一を凝視していた男――快斗は、新一の言葉に一瞬呆気に取られた表情を見せた後、可笑しそうに笑む。
会話が終わりを告げ、快斗のごちそうさま。の一言で、互いに別方向に歩き出す二人の表情は、穏やかだった。




その後、大学で再び出逢うとは、この時の二人には知る由もないことで。
交わりはしなかった二人の運命が、このとき、初めて絡み合った。







□-◇あとがき◇-□

センターの試験中に問題用紙に書き殴った小説です(ォイ)
かなり新一さんが男前。
んでもって快斗さんが受けくさい(爆)
なんでしょうね。
こーゆースタンスで快新小説書きたい衝動がただ今絶賛押し出し中(←意味わかんないよ。) なんですョ。
とりあえず。
この小説、何気に続きます。