スノースマイル


玄関の扉を開けたら、目の前に月明かりに光り輝く雪が降り積もっていました。

なんとも語りかけるような言葉になってしまったのはこの際仕方が無いだろう。
どちらかと言えば、太平洋寄りに位置する帝都・東京。
だが、冬ともなればそれなりに雪は降り積もるわけで。
長年住み慣れた土地なので、毎年の見慣れた光景であり、別段目を見張るものでもないのだが。
如何せん、時間と時期が悪かった。
ふと、夜も更けた深夜2時頃。
コンビニの肉まんが食べたくなった新一は、すぐさまコンビニへ行く事に決め、意気揚々と支度を済ませ、玄関の扉を開けたのだ。
すると意外と外は明るく、夜独特な月の光が、降り積もったばかりだと窺える新雪の上に降り注いでいた。
空を見上げてみれば、月は真ん丸で、新一の辺り一面は銀世界へと変わっている。
これを驚かずに何に驚けと言うのだろうか。
そう思えるほどの雰囲気を辺りは醸し出していた。

そんなこんなで新一はコンビニへと出かけていった。





新一の住んでいる米花町にコンビにはいくつもある。
隣町との境目などにもコンビにはあり、様々な店舗のコンビニが揃っている。
もちろん、新一の家の近所にもあるわけで。
5分も歩けば余裕で着いてしまう距離にあるのだが、その店舗のコンビニには肉まんを置いていなかった。
仕方が無いので、他のコンビニへと足を向ける。
何故か今日に限って肉まんがとても食べたいらしい。
ともあれ、近所のコンビニへと思って家を出て来た身なので、たいした防寒対策もしておらず、夜の冷気が容赦なく襲い、頗る寒い。
自然早足になるため、通常の所有時間より早めに到着した。
コンビニへ入ると暖かい空気が新一を包み込む。
寒い中歩いてきたため、機嫌が降下気味だったのだが、一瞬で和らいだ。
目当てのものも買え、来た道と同じ道を通って帰る。
新一の背後から月明かりが照らしていて、足元に影が落ちた。
1つのはずの影は、何故か2つで。
相手の纏う空気は、知り過ぎているもので。
どうしてこの場所にいるのか不思議に思いながら、新一は振り返った。

「見つけた、新一。」
「快斗。
 どうしてお前がここに?」
「仕事終わって、新一の家に行ったら暖房器具は稼動しているのに新一がいなくて、 防寒具はそのまま置き去りにされてたから。
 それらしいものは何もなかったから、何か起こったわけじゃないと判断して近場を探してたんだ。
 雪積もってるのに薄着で外出しちゃダメでしょ?」

新一の問いに答えながら手に持っていた新一のコートを着せていく。
自分のしていたマフラーを外して新一の首に巻きつけ、手袋さえも外そうとする快斗を新一は止めた。

「お前が寒くなるだろ?
 手袋はいらない。」
「けど新一、手冷たいじゃん。」
「肉まんがあるから平気。」
「そんなことしてると肉まん、早く冷めちゃうよ?」
「…………」

押し黙る新一に苦笑を洩らし、快斗は妥協策として右手の手袋を外して手渡した。

「片っぽずつならどっちも寒くならないからいいでしょ?
 新一の左手は、こっち。」

微笑を向けながら素手のままの右手で新一の左手を握り、着ていたコートの右ポケットに一緒に突っ込んだ。
自然、寄り添う形になり、2人の距離は近づく。
少し歩き難くなり、小さく抗議しようと快斗の顔を見やれば、その表情はどこか楽しそうで。
新一はため息と共に抗議の言葉を捨てた。

「何?」
「なんでもない。」

きょとんとした表情で新一を見る快斗に、優しい笑みを向け、雪の上を歩いていく。
行く時は1つだった足跡も今は2人分ある。
歪ながらも雪の上に残る足跡の平行線は玄関まで途絶える事は無かった。

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