■03.動けないきみ
鳴り響く銃声。
耳をつんざく悲鳴。
こだまする怒声。
全ては、耳に付けたイヤホンを通して聞こえてくる音で。
自分の役割が何であるか、きちんと承知している筈なのに。
この場で動けないことが、歯痒かった。



数日前、月夜の晩に現れた白い怪盗は、コナンと哀に共同戦線を持ち掛けて来た。
怪盗の言葉を借りるとすれば、『敵は違うが根っこの部分で繋がりがあるから手を組まないか。』ということだ。
半信半疑だったが、怪盗の持つ情報ネットワークは凄まじく、哀達が知り得なかった事まで事細かく調べられていた。
そして、その一つが黒の組織と白い怪盗を狙う組織の繋がり。
その組織は両方とも別々であるのに、元を正せば同じ組織から分離した物だと云う事。
その組織同士、横の繋がりはなくとも、縦の繋がりはあった。
組織の壊滅は、残党を残さず潰す事で終結となるので、どのみちどちらにとっても潰さなくてはならない組織。
だからこその、怪盗の言葉だった。

過去へと馳せていた思考を戻し、哀は目の前の画面と、鼓膜に響く音声に注意を向ける。
その音声に、微かに悲鳴や怒声ではない、話し声が聞こえてくることに気付いた。
コナンが怪盗ではない誰かと、会話を交わしている。
今回の計画では、コナンと他者の接触は、してはいけない事と取り決めた筈だ。
哀と怪盗が、それを許さなかった。
なのに。
今、コナンは組織の誰かと話している。
何を話しているのか、音声はきちんと拾い切れていない。
咄嗟に哀は、胸元に着けた小型マイクに手を伸ばした。

「キッド、江戸川君が誰かと接触しているわ。
 そっちに向かって頂戴。」

内部の地図を映し出した画面の中に、点滅する2つの印。
それは、コナンとキッドの現在位置を示している。
2つの点は、遠くもなければ、近くもなかった。
それでもコナンをキッドに託したのは、哀とキッドの間で唯一定めた決め事。

『女史の役目は現場ではなく、それが終わった後にあります。
 ですから、動かなければならない時は私を使って下さい。
 動けない貴女の代わりに、私が動きましょう。』



それから爆発音が響き、崩壊する建物から怪盗と小さな探偵が姿を現すのはもう少し後の事。







□-◇あとがき◇-□

本当は快新で書こうかなと思ったのですが、動けないのは、哀ちゃんかな。と。
んでもって、全てを承知で哀ちゃんを助けるKIDとか。
コナンに愛でられる哀ちゃんも好きだけど、KID(快斗)に愛でられる哀ちゃんも好きなようです(苦笑)
これまた尻切れトンボみたいな終わり方になってしまいましたが、これつらつら書くとどうしても中篇くらいの長さになっちゃいそうだったのでこんな感じにまとめてみました。
今回はコナン君が喋ってないので表記は『KID+哀』で。

因みに。
コナンさんと話をしていたのはベルモットで、もうすぐこの建物は爆破されるわ。的な会話をしていたという裏設定が有ったり無かったり(←どっち?)
2006.10.01
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