2 上手に嘘がつけたなら
何でも無い顔するのはアイツと一緒。
実際、そこまで騒ぎ立てる程のものでも無いかもしれないけど。
甘えは、禁物。
「ちょいタンマ、修兵。」
「はい?何でしょう?黒崎隊長。」
「お前、怪我してるだろ?」
「たいしたことないので平気ですよ。
それにしても、よく気付きましたね。
もう血も固まりかけているのに。」
「慣れてるから。」
廊下でのすれ違いなんて、ほんの瞬間的なものだ。
それなのに、たった少しの切り傷を、もう固まりかけている血を、嗅ぎ分けた。
それを、たった『慣れている』の言葉一つで片付けれるものではないと、修兵は思う。
一体どれだけの血の雨を降らせ、その身を紅に染めてきたのだろう。
零番隊の任務は、他の護廷十三隊とは違い、難易度も危険もとても高く、いつも死と隣り合わせだと聞く。
それを、今少しだけ思い知らされた気がした。
「あんまり傷に鈍くなるなよ。
普通に怪我しただけでも菌や何かが入ったりしたらやっかいなんだ。
虚によっちゃ、毒とか塗り込まれてるかもしんねぇからな。」
「黒崎、隊長?」
「なんだ?」
掴みあげられた腕には紅く一線が引かれている。
先ほど、風に煽られて飛んで行ってしまった書類を取ろうとして、木の枝に引っ掻けてこさえた傷だ。
その上を、一護は掌を翳しなぞるように動かした。
一往復。
二往復。
三往復。
いつの間にか、傷は塞がり、ただの一本の線が肌を走っているようになった。
「治癒能力も、持っていらしたンですか?」
「ん?あぁ、違う違う。
俺の場合は、自分の霊圧を傷口に送って細胞を活性化させてるだけで、4番隊が使うような治癒能力は持ってない。
まぁ、夏梨なら多少治癒能力使えるがな。」
「夏梨...9番隊にいる、黒崎隊長の妹ですか?」
「多分傷作ったまんま隊舎に戻って夏梨に見付かったら副隊長と平の死神なんていう壁、いともあっさりぶち破って怒ってくるぞ。」
クツクツと、さも面白いと言わんばかりに笑みを浮かべる表情は、悪戯を思い付いた悪ガキそのもので。
業務以外であまり接点が無く、親しい間柄でも無かった筈なのに。
一護の纏う空気は穏やかさと親しみ易さを兼揃えている。
修兵は、彼を慕う下位の死神たちの気持ちがよく解る気がした。
「ム...一護。」
「あぁ、チャド。今行く。」
「あ、それでは俺はこれで失礼します。
ケガの手当、ありがとうございました。」
「おう。
またな、修兵。」
丁度通り掛かった零番隊副隊長茶渡泰虎と一緒にその場を去る一護に礼をとった後、修兵も隊舎へと帰って行った。
慣れてしまった、血のにおい。
どんなに微量でも、すぐに嗅ぎ分けてしまう。
大きかろうと、小さかろうと、怪我を隠すクセのあるアイツがいるから。
□-◇あとがき◇-□
茶一です。
誰がなんと言おうと、茶一です。
修一に見えなくも無いですが、茶一です。(三回も言いおった!!)
んとですね、この後、9番隊隊舎に戻った修兵サンは夏梨に速攻で怪我したことと、その怪我を一護が治した事を見破ります。
案の定、副隊長と平死神のエベレスト並みのたっかい壁もあっさりぶち壊し、一護の治癒の危険性を怒鳴りながら喋るんですねー。
↓
「檜佐木副隊長ー!!」
「ん?なんだ?黒崎。」
「怪我したでしょう!?そんでもってそれ、一兄が治したでしょう!?」
「あ、あぁ、飛ばされた書類が木に引っ掛かってな、取ろうとしたらさっくりと。」
「怪我したら直ぐに4番隊へ行って適切な処置を受けてください!!
普通に怪我しただけでも菌や何かが入ったりしたらやっかいなんですよ!!
虚につけられた傷とかだったら、毒とか塗り込まれてるかもしれないし。
それに、 って、何笑ってるンですか!?」
「スマン、スマン。
黒崎隊長にも、同じ事を言われたな、と思って。」
「そりゃぁ、私の兄ですから。
そんなことより、一兄の治し方は危険なのであまり受けないで下さい。」
「ん?何でだ?」
「一兄の場合、普通の治癒と違って自分の霊圧を相手に送って細胞を活性化させて回復を促すンです。
この場合、一兄の霊圧に耐えれるくらい力がある人じゃないと、一兄の霊圧で細胞が活性化し過ぎて周りの細胞が壊死して行き、最悪の場合、死に至ります。」
「それはまた...すごいな。」
みたいな、感じで。
修兵サンなら大丈夫だろう。って事でやったことです。
因みに。
一護が治癒した相手は修兵サンが2人目です。
1人目は言わずもがな。
チャドですねー。
ていうか、夏梨の口調、解ンないよ。
だからこそ、このおまけみたいなとこで出してんだけど...
遊子も死神してますよ。
4番隊在籍です。