「中丸ー、次の授業何?」
「んー...数学?」
机に懐いている聖がだれた声を上げた。
返事をする中丸も、心なしか意気消沈している。
それもそのはず。
前の時間の授業nに行われた抜き打ちテストが尾を引いているようだ。
そんな中、仁は机に伏して寝息を立てていた。
「こいつ一発殴りてぇ...」
「全くだ。」
仁は抜き打ちテストも早々に終えて、余った時間からずっと寝ているのだ。
仁の後ろの席の中丸は、その列の一番後ろの席なので、授業終了後に仁の回答用紙を枕にされた腕の下から引き抜いたのだが。
その用紙は見事に埋められていて、筆記体で書かれた単語は中丸の理解の範疇を越えていた。
授業なんて殆ど聞いていないのに、なぜにあんなに出来るのか。
怨みがましい視線を向けてしまっても仕方ないだろう。
「ま、赤西の場合、英語と体育以外からっきしダメだけとな。」
「体育以外全部ダメな俺らって、赤西以下ってことか!?」
「そうは言ってないだろ!!
しかも何だよ、“俺ら”って!!!」
「髪の毛毟るぞ、このヅラめ!!」
「ヅラじゃねぇー!!」
微妙に噛み合っていない、聖と中丸の漫才みたいなやり取りに笑うクラスメート。
その中に、混じる数学担当の教師。
恰幅の良いその数学教諭は、微笑ましく二人の様子を眺めていた。
「漫才は終わりましたか?中丸君、田中君。」
「あ、はい。
お待たせしました。
どうぞ、授業を始めて下さい。」
「では今日は対数関数を勉強したいと思います―――」
なんちゃらかんちゃら。
黒板に書かれる記号や公式はもはや呪文だ。
底(てい)だとか真数だなんて、言われてもどれを指しているのかさっぱりで。
中丸も聖も、とっくに両腕を枕に夢の世界の淵を彷徨っていた。
多分、この数学教諭のほやほやとした雰囲気と、それに比例するかのようなおっとりとした喋り方が眠りを誘う最大の原因だ。
そんなことを思考の片隅で思いながら、中丸は夢へと旅立った。
「―――であるからして、この公式を当て嵌め、解はx=8となります。
次の問題は、」
「...!!
今何時!?」
突然ガバリと上体を起こした仁は、思い切り声を発した。
「今は12時を少し越した時間ですよ。」
「学食の限定オムライスが!!」
「あぁ、それはいけませんね。
早く行かないと売り切れてしまいますよ。」
いきなり聞かれれば戸惑ってしまうような勢いだったにも関わらず、数学教諭はおっとりと仁の問いに答えた。
4限目の授業は、12時半に終わるのだが、学食から一番遠い所に位置する仁たちの教室からでは授業終了後にオムライスを買いに行ったのでは決して間に合わない。
そのことを知っている数学教諭はおっとりと、仁に授業をエスケープして買いに行くように促した。
教師として、それは如何なものかとも思うのだが、そんなこと、時間に迫られた仁には関係がない。
颯爽と教室を飛び出して学食へと向かって行った。
「赤西君はオムライスが好きなのでしょうか?」
「.........どうでしょう...」
ズレた発言をかましながら、数学教諭はまた黒板に向き直り問題解説を始める。
残されたクラスメートは苦笑を漏らし、中丸と聖は、仁が盛大な音を立てて走り去ったにも関わらずまだ夢の中を揺蕩っていた。
□-◇あとがき◇-□
取り合えず、睡眠学習をするなら理数系の教科が一番かな。と。
それか古典の授業か。
どれも興味がないと念仏や呪文にしか聞こえない教科ですよね~。
しかも意味不明なの多いし。
こんな感じで。
そういや、亀梨サンって、ケチャップって平気でしたっけ?