■ 06.抜き打ちテスト
「亀ちゃん、次授業は?」
「あるよー。
 上田は?」
「俺もある。」
「んじゃ、一緒に職員室行こっか。」

サッカーの授業も終わりを告げ、騒がしく片づけを始めるのを視界に入れながら残ったコーヒーを一気に呷る。
次の授業の準備をしていると、次に行くクラスで使うプリントを職員室に忘れたことに気付いた。
聞けば上田も次の授業があるという。
ならば、一緒に行けば良いか。と思い直し、社会科準備室を二人一緒に後にした。

「そーいえば、俺今日お弁当無いンだった...」
「4限目は?」
「ある...」
「じゃぁ、昼休みに他の生徒達に紛れて購買で買うか、外に買いに行くしかないね。」
「げー。」

職員室へ行く道すがら、ふと和也はお昼ご飯のことを思い出した。
いつもは毎日ちゃんとお弁当を作って持ってきているのだが、今日は朝寝坊をしてしまい、朝ご飯でさえきちんと作れなかったのだ。
それを思い出し、尚且つ生徒が犇めき合う購買へと身を投じなければいけないのだと思うだけで、和也の機嫌は降下中。
とても嫌そうな、それでいて拗ねた表情を見せる和也は、どうみても成人男性に見えなった。
可愛らしいとも形容できる表情で、アヒル口になっていて、とても愛らしい。
だが、その実、和也はとても男らしい性格をしていた。

「そうだ!!
 仁に買ってきてもらえばいいんだ。
 俺が寝坊するきっかけ作ったの仁だもんねー。
 限定20個しか販売されないオムライス頼んじゃおーっと。」

名案が思いついたとでも言うようにニコニコと、携帯を取り出しメールを打つ和也は機嫌を直したようだ。
廊下を歩きながらのメール打ちは、些か危ないのではないのか。と上田は思ったが、何かあったら自分が動けば良いか。と完結し、和也の横を歩いていく。
職員室前に着いたとき、ふと、和也の前に影が出来た。
携帯ばっか見ていた和也は咄嗟の事でビクっと身体を震わせたが、上田によって何とかぶつかることは避けれたようだ。
軽く上田に礼を言い、目の前の人物へと視線を向ける。
職員室の扉の前に佇む白衣の男――この学校の保健医で、名を田口淳之介と言う。

「何やってんの?田口。
 入るなら入れば?」
「ん?
 あぁ、俺の用事はもう終わったんだ。」
「だったら本拠地に戻れば?」
「ホントにいつも厳しいこと言うね、上田先生は。
 戻ろうと思ったんだけどね、アレ。
 中々見てて飽きないよ。」

“アレ”と言われて田口が指差した方へ視線を向けてみれば。
英語教師の男性が一人、意気込みを顕わに握りこぶしを作って何事かを叫んでいる。
耳を済ませてみると、その内容は次の授業で抜き打ちテストをする。というものだった。
この時点で抜き打ちも何も無いのではないのか。と思ってしまったのは、何も和也たち3人だけではないようで。
たまたま通りかかった生徒たちが、笑い話として話に花を咲かせていた。

「今度こそは全員一桁台を取らせてやる!!!
 打倒赤西だ!!!」

「...は?」
「あ~...そーいや、ウチのクラスの次の授業、あの先生の英語だ。」
「聞くところによると、毎回抜き打ちテストやってるらしいんだけど、悉く赤西君に満点掻っ攫われてるみたいだよ。」
「あー...仁、他の教科はてんでダメなのに、英語だけはやたらと出来るからなぁ~。
 てか、毎回って...ソレ、抜き打ちテストって言わないんじゃない?」

聞きなれた名前に反応した和也に、上田はのほほんと、受け持つクラスの時間割を思い出していた。
和也は、1週間毎回同じローテーションなんだから、担任なら覚えとけよ。と思いもしたが、言うと後が怖いので口を噤んでいると、田口がさも今思い出したと言わんばかりに会話を発展させる。
その内容に、だからあの台詞なのか。と和也が内心で関心してると、

「ていうか、教師としてあの台詞間違ってるよね。」

と上田から鋭い突っ込みが飛んできた。





授業が終わり、和也が職員室へと入ると、抜き打ちテストと称されたテストを丸付けし、またもや似たようなことを叫ぶ英語教師を目撃した。







□-◇あとがき◇-□

一度消してしまった物を再構築って...かなりキツイです。
しかもね、最初に書いてたもの、ホントに最後まで書けてたの。
なのに...(泣)
あ、田口さん登場です。
彼は保健医になってもらいました。
update : 2007.03.17
html : A Moveable Feast