「遅れてすみません!!!」
バタバタと騒音を撒き散らしながら廊下を駆けるのは中丸。
そして、その後ろから嫌々走っているのが赤西。
仁に至っては、中丸に右腕をしっかりと掴まれているので走るほか術が無い。
そうして辿り着いた教室。
思い切り勢いをつけて開かれた扉は、バウンドして半分ほど閉まりかけていた。
「理由を述べろ。
まず中丸。」
「鳩を狩ろうと必死にネコパンチを繰り広げるにゃんこを見ていて遅刻しました!!!」
あまりにも嘘だと分かる理由を述べる中丸を一瞥した担任教師――上田竜也は、仁に視線を移す。
遅刻しているというのに、何とも堂々と上田の前に立つ仁は、取ってつけたような理由を述べた。
「次赤西。」
「あ~...俺?
...んじゃぁ、洗濯物干してて遅刻しましたー。」
「赤西は見逃してやる。
中丸はバケツぶら下げて廊下で立ってろ。」
「なんで俺だけ!?
赤西だって、遅刻じゃん!!」
「お前の理由はあからさまに嘘じゃん。
俺に嘘吐いて良いと思ってんの?
この学校内にいる限りは治外法権で俺が法律だよ?」
ずずい、と身を乗り出すようにして上田に食い下がる中丸に、こちらもずずい、と顔を近づけて恐いことをサラリと言い放つ。
さもそれが当たり前とでも言うように、自称Sを名乗るこの男は容赦が無い。
そして、それに慣れてしまった、否、慣らされてしまった生徒達は項垂れるしかなかった。
食い下がっていた中丸も、上田の天上天下唯我独尊な態度と、いきなり顔を近づけられたことへのダブルパンチですごすごと掃除用具箱へと歩いていく。
がたがた、と音を立てて取り出したバケツを持って、入ってきた入り口を出て行った。
「分かればよろしい。
あ、ちゃんと水入れろよー。
取り合えず、HRが終わる時間まででいいから。」
「はーい...」
「中丸...お前の犠牲は無駄にしないからな!!」
「っ!!
もう赤西なんかぜってー拾うもんか!!!」
うわーん、なんて、泣き真似をしながら水道へと走り去る中丸にクラスに一斉に笑いが巻き起こった。
ガラン、ガラン、とバケツを振り回す音が響く。
隣のクラスの担任が中丸に「廊下は静かに走れ!!!」という、なんともズレた説教をするのが聞こえ、また笑い声が高まった。
「あいつも嘘吐かずに普通に寝坊した。って言えばいいのに。」
「けど上田、中丸が考える言い訳結構好きだろ?」
「だって面白いじゃん。
この前なんか、なんて言ったと思う?
『魚を銜えたドラ猫を見かけたので、サザエさんが追いかけてくるのを今か今かと待ってて遅刻しました!!!』だって。」
「あいつもバカだねぇ~。」
「面白いから飽きないけどね~。
ほら、赤西も早く席につけ。
遅刻3回で欠席1回つけるからな。」
まだ廊下を響かす音をBGMに、上田と仁の会話は終わった。
軽い返事を返して席に着く仁は、隣の席の坊主頭のクラスメート――田中聖といくつか会話をして、腕を枕に寝る体制へと入る。
まだ学校は始まったばかりだと言うのに、仁は心地よい眠気に誘われて夢の中を揺蕩った。
「あ、赤西。
次呼び捨てにしたら留年させるからな。」
独裁者の声は、仁の耳に届いたのだろうか?
□-◇あとがき◇-□
なんとなく、ほのぼの。
んでもって中上?
ちょいと上田サンの口調が分からなくて微妙なものに。
そして赤西サンが大人しい......
うん、眠いと大人しくなるんです!!!とでも思っておいて下さい(汗)