■もしも「犬×猫」だったら 2007/03/21
シトシト...
ポタポタ...
空から落ちる雫。
それは、誰かの流した涙のように、降り注いだ。
「わんわん!!(中丸、散歩連れてって!!)」
「おい、ジン。
今日は雨降ってるから散歩は行かないの。
おわかり?」
「わんわん!!(でも、何か聞こえるの!!連れてって!!)」
「何?どうしたの、ジン。
いつもなら聞き分け良いのに。
何かあった?」
「あ、たっちゃん。
分かんない。
さっきからずっと外見てせがんでるんだけど...」
将来、大型犬に成長するだろうゴールデンレトリバーの子犬が一匹。
名前はジン。
ジンは、空から大地へ吸い込まれるようにして落ちていく雫を見ながら吠えていた。
心なしか、そわそわと忙しなく身体を動かしていて。
可愛らしい尻尾が座っている床をピシピシとリズム良く叩いている。
そんな子犬の落ち着かない様子を見やる飼い主――中丸雄一は様子のおかしいジンを心配げに見ていた。
すると、同居人にして中丸の恋人の上田竜也がジンの座っている床の横に腰を降ろしてジンの頭を撫でながら見つめる方向に目を向ける。
視線の高さが違うのか、見えているものが違うのか。
上田の目では、ジンの見ているものは何も見えない。
一つため息を吐くと、上田は手を伸ばして窓の鍵を開けた。
戸を軽く引くと、弾かれたようにジンは立ち上がり外へと駆け出していく。
「たっちゃん!?」
それに慌てたのはもちろん、中丸で。
上田のとった行動を咎めるでもなく、急いで玄関へと走り靴を引っ掛け、傘も持たずにジンを追うため外へ出た。
その後ろをタオルと傘を持って上田が続く。
「ジン!!!
どこ行った!?
聞こえてたら返事しろ!!ジン!!!」
「わんわん!!!(ここだよ、中丸!!!早く来て!!!)」
「中丸、あそこ!!」
声を張り上げて叫ぶ中丸の音に混じって、犬の吠える音が微かに混じる。
それを耳聡く聞きつけた上田は、中丸の身体を強引に方向転換させた。
そのまま向けられた方向へと走る中丸。
少し、視界が悪かったけど、なんとか見つけることの出来たジンの側に、黒い小さな物体を見つけた。
「...子猫?」
「わんわん!!!(中丸!!!こいつ、さっきからぐったりしてるの!!!助けて!!!)」
「中丸!!」
「っ!!
たっちゃん、そのタオル貸して!!!
子猫が弱ってるの!!助けなきゃ!!!」
後ろから追いついてきた上田から、半ば引っ手繰る様にしてタオルを受け取り、子猫を抱き上げた。
鳴く気力すらないのか、力なくぐったりしている。
ホントに、片方の掌にすっぽりと治まるくらいの小ささで。
いくら雨量が少なくても、小さいこの身体では堪えれるはずもなく、ぶるぶると小刻みに震えている。
中丸はその子猫をタオルで包んで優しく擦りながら家へと急いだ。
促さなくてもジンはちゃんと後ろを付いて来ていて、窓を開けてジンを外へ出した上田に、中丸は心の中で感謝した。
家について、中丸はすぐさま子猫を暖めてあげようとしたら、上田に止められた。
彼曰く、
「雨に体温奪われてるのは中丸もジン一緒でしょ。
猫は俺がどうにかするから、ジン連れてその濡れた身体何とかしてこいよ。」
とのことで。
確かにそうだったので、その言葉に甘えて中丸はジンを連れてお風呂場へと直行して。
ジンは、子猫が心配だったのか、中々指示に従おうとはしなかったが、何とか力付くで連れ出した。
それでも、中丸も子猫が気になるのか、手早くお風呂を済ませ、ジンを洗ってドライヤーで乾かす。
上田の元へと急ぐと、部屋は暖房器具が付けられていて、子猫はソファに座った上田に抱かれて暖められていた。
「どう?その猫の様子は。」
「ん。
大分落ち着いてきたよ。」
「きゅ~ん。(ねぇ、上田。こいつ大丈夫?大丈夫?)」
「ジン。
大丈夫だから俺の上に乗るな。」
「たっちゃん、変わるよ。
ほら、ジンもこっちおいで。」
中丸がソファに近付くとそれに伴ってジンもソファに乗り上げ、事もあろうに上田の膝の上に乗って抱かれている子猫を覗き込んでいる。
いくら子犬だからといっても、重いものは重くて。
普段の上田ならばジンが膝の上に乗り上げた瞬間に立ち上がり振り落としているところだが、今日は弱っている子猫を見つけた手柄がある。
だから、言葉にして行動に移すのはやめたのだ。
それを敏感に感じ取った中丸は、自分の膝の上にジンを乗せて上田から子猫を受け取った。
ジンも心配なのだろう。
落ち着かなくきゅんきゅんと鳴いている。
「で、この子猫どうするつもり?」
「ん?...あぁ、見たところ捨て猫のようだから、明日獣医に連れてくよ。
その後は...ウチで飼うかなぁ。
たっちゃんはイヤ?」
「ん~...イヤじゃないよ。
この猫、絶対美人に育ちそうだもん。」
「そう?なら良かった。
ジンも良いか?」
「わん。(良いよ!!!俺こいつ気に入った!!!)」
子猫を気にしてか、いつもよりは小さく、けれども元気に吠えたジンに、ソレを肯定と見なして中丸はジンの頭を撫でた。
すると、とても嬉しそうに尻尾を振るジン。
あまりのはしゃぎっぷりに中丸の膝から落ちそうになったりもしたが、そこはなんとか堪えて、再度、子猫を覗き込む。
「...みぃ~......」
「あ、目が覚めたかな?」
中丸が優しく擦っていると、小さくか細い鳴き声が耳に届く。
弱々しいものであったが、鳴けない位体力が消耗されていた先ほどよりは鳴けた分、今の方がマシなのだろう。
小さな瞳が、ゆっくりと開かれた。
「わふ。(お前、大丈夫か?どっか痛いところとかないか?)」
「...みぃ~......(だれ...?)」
「わん。(俺、ジン!!今お前を抱いてるのが、俺の飼い主の中丸。その隣にいるのが上田。)」
「......みぃ...(ここ、は...?)」
「わん。(ここは中丸の家。今日からお前の家にもなるんだぞ。)」
何か、会話してるね。と、上田が中丸に話しかけている。
その下で、交わされる犬と猫の会話は、種族が違うからか、なんとも微笑ましく見えて。
とりあえず、数回鳴いた子猫は、また瞳を閉じて寝付いてしまった。
「あ、この子猫の名前、どうする?」
「う~ん...じゃぁ、“カメ”ってのは?」
「“カメ”?
動物の?亀?」
「うん。
なんか、今弱ってるからだと思うけど、動作がゆっくりしてるから。
だから“カメ”」
「猫に“カメ”...まぁ、いっか。
んじゃ、今日からこいつはカメな。
ジンとも仲良いみたいだし、明日カメのためのもの色々買いに行かなきゃだね。」
子猫――カメを抱いていた手を、膝の上に下ろしたら、その手ごとカメを包み込むようにしてジンが横たわった。
尻尾をゆらゆらと揺らして、ジンも寝る体制になっている。
シトシトと雨の振る音をBGMに、慌しかった時間は、ゆったりとした時間に移り変わっていった。
「みぃ~。(ジン、ジン!!待って!!)」
「わんわん!!(カメ早く!!!)」
「みぃ。(ジンが早いンだよ!!待ってたら!!)」
「わんわん!!(ほら、カメこっち!!早くおいで。)」
数日後、犬と猫という種族の壁をぶち壊すほど仲の良くなった二匹は仲良く中丸家の庭で遊んでいる。
ジンよりも小さいカメは、どうしても歩幅が違うためジンの後をテテテ...と小走りで追いかけていて。
そんなカメを数歩前で立ち止まって待ったりしているジン。
仲睦まじい二匹は今日も平和に暮らしている。
□-◇あとがき◇-□
犬猫で書きたくなって書いちゃったこの小説...
なんだかなぁ。
コレ、短篇よりも長篇向けじゃない?
てか、私の書く小説って、どっちかって言うと短篇向け少ないよね?
短篇にするから話が変になるんだよ...ι
自覚しつつも、持久力無いので短篇しか書けないんです(苦笑)