■極先設定「H×R」  2007/05/19
ザラザラと、固形物がオチル音。
情緒不安定なアノ人。
俺にかけられる言葉は、建前なのだと解るほどに、感情の篭らない会話。
要らないなら、捨てれば良いのに。
ケモノみたいに本能に忠実に生きているのに、人としての道徳や世間体を重んじて切り捨てることが出来ないようだ。
子供心に、そう思った小学生時代。
お前なんか、要らないのだと、アノ人から感じ取る度に。
ココロが温度を下げていく。

キシッ...パキッ...

徐々に、音を立てて冷えていくココロは、この年になるまで、何度凍り付いただろう。



「...はやと...」
「ん~、どした?竜。」
「はやと...」
「うん。
 大丈夫だよ。」
「はやと...!!」

時折、思い出したかのように情緒不安定になってしまう時期がある。
数分で終わることもあれば、数時間、数日、時によっては1ヶ月不安定な時期もある程で。
そんなとき、無性に人肌が恋しくなる。
隼人とそういう関係になって、身体を重ね合わせてからは、隼人だけが欲しくなった。

「はやと...、はやと、はやと...!!」
「大丈夫だよ、竜。
 俺はここにいるから。」
「はやと...好き...
 どうしようもないくらい、好き...」
「俺も竜が好きだよ。
 愛してる。」
「はやと...」




アノ人はいつも、情緒不安定になると薬に走っていた。
ザラザラと音を立てて錠剤が容器から解放されても気付かないくらい、慌てて薬を口にいれるのだ。
すると決まってアノ人は、俺を認識しなくなる。
“いない者”として存在し続けた俺を、見てくれたのが、隼人。
一人の人間として、扱ってくれたのが、隼人なんだ。
俺の安定剤は隼人だから、いつの間にか依存してしまっていた。
即効性の毒物なんかよりも、甘美で溺れる麻薬みたいな隼人がいなくなったら、きっと俺は死んでしまうだろう。
それくらい、依存している。
けれど、どういう形でも、隼人に殺されるなら本望だと思う俺も、もしかしたらアノ人と変わらないのかもしれない。

「愛してる、竜。」
「一生...離さないで...
 俺を、捨てないで...!!」
「死ぬまで、一緒だよ。
 だから、安心して寝な。」
「うん...
 はや、と...は、ゃと...」



ポタッ...ポタッ...

隼人に抱きしめられるだけで、暖かく包まれるだけで。
凍り付いたココロは、容易く融けだしていく。
もう、この人だけは、離せない。







□-◇あとがき◇-□

以前隼人サンが不安定な設定で書いたので、今回は竜ちゃんにしてみました。
竜ちゃんの言う『アノ人』は母親ってことにしておいてください。
なんとなく、板ばさみにあって脆そうなイメージがあったので(苦笑)
なぁ~んていうか...私のほうが情緒不安定みたいですよね、コレ読む限りでは。
昔の塾の先生にしてみれば、「情緒不安定じゃなかった時はない。」らしいのいですが(笑)
取り合えず、手直ししてみても、こんなんになりました。
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